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第十二部第二章 強襲その七
「装甲車なら大丈夫だと思いますが」
「よし」
 シコースキーはそれを聞いて頷いた。ティアマト級巨大戦艦は甲板を守る為に戦車や装甲車も配備しているのである。それを艦内に持って来ることにしたのであった。
「ではそうしよう」
「はい」
 こうして艦内に装甲車が入れられることになった。廊下を巨大な車両が音を軋ませながら入って来た。
「これでエウロパの貴族共を轢き潰してやるぜ」
 装甲車に乗る兵士が砲塔から顔を出して言った。
「おい、それは止めてくれよ」
「どうしてだよ」
 だがそれは側を進んでいた友軍の兵士に窘められた。
「轢き殺した後で誰が処理すると思ってるんだよ」
「?俺達だな」
「そんなミンチになった死体を処理したいか?よく考えろよ」
「そうだな。じゃあ機関砲で派手に撃ってやるか」
「それでも結局バラバラになっちまいそうだがな」
「まあそれは仕方ないだろ」
 そんな話をしながら戦闘ポイントに向かった。そこでは激しい戦闘が行われていた。
 連合軍の将兵はバリケードを築いて戦っている。それに対してエウロパ軍もバリケードを築いていた。連合軍の圧倒的な火力の前に進撃を止められていたのだ。
「むう」
 その地点のエウロパ軍の指揮官は困った顔をしていた。迅速な攻撃により突破するつもりだったがそれができず、こうして停滞していたからだ。
「参ったな、進むに進めない」
「どうしますか」
 部下の一人が彼に尋ねた。
「このままでは埒があきませんよ」
「そうは言ってもな」
 タンホイザーなら自ら剣を持って切り込み、戦線を突破するだろう。しかし彼はタンホイザーではない。それは到底不可能なことであったのだ。
「敵の守りは固い。迂闊には手を出せない」
「ですね」
 問うた部下にもそれはわかった。連合軍は数だけでなく銃火器の性能も、防御服の能力も高かったからであった。これが大きく関係していた。
「どうすべきでしょうか」
「今は耐えるしかない」
 指揮官はそう答えた。
「司令が戻られるか、援軍が来るまでな」
「わかりました」
「そこか!」
 ここで後ろから声がした。ラテン語であった。
「来たか!」
 エウロパ軍の将兵達はそれを聞いて一斉に後ろを振り向いた。そこには友軍の将兵達がいた。
「助けに来たぞ!」
「すまん!」
 援軍を受けて彼等は攻勢に転ずることにした。すぐにバリケードをどけ、突撃に入ろうとする。しかしそれは適わぬことであった。
「な・・・・・・」
 前を見て絶句した。そこに信じられない光景が映っていたからであった。
「そんな馬鹿な・・・・・・」
「どういうことだ・・・・・・」
 それを見て絶句した。艦内とは思えない光景だったからだ。
「フン、どうやら驚いているようだな」
 装甲車に乗る兵士が呆然とするエウロパ軍の将兵達を見て得意気に笑っていた。
「貴様等の価値観だけで判断しているとえらいめに遭うということを教えてやる」
「そもそもこんなこと普通は考えつかないな」
 側にいる同僚の兵士がまた言った。
「そうか?」
「というか前代未聞だぞ、艦内で装甲車を使うなんてな」
「そうかな。探せば一回位前例があるんじゃねえか?」
「ないよ」
 同僚はややふてくされた感じでそう言葉を返した。
「狭い船の中でどうしてこんなデカブツが使えるんだよ、よく考えろ」
「それもそうか」
「おい」
 ここで前を行く将校が彼等に声をかけてきた。
「話はいいから攻撃に移れ。折角敵が動揺しているんだからな」
「おっと、そうだった」
「じゃあ攻撃に移りますか」
「ああ。機銃掃射を仕掛けろ」
「了解」
 前方の連合軍の将兵達が一斉に下がる。バリケードを踏み潰しながら装甲車が前に出て来た。そして戸惑うエウロパ軍の将兵達に対して攻撃を仕掛けた。これにより戦いは大きく変わった。
 
 この頃タンホイザーはムラコシと一騎打ちを続けていた。互いに剣と刀を振るい、戦いを繰り広げる。
「ムンッ!」
 タンホイザーの剣が唸り声をあげながら前に突き出される。ムラコシの胸に突き刺さるかに見えた。しかしそれは見えただけであった。
「なっ!?」
 何と剣がムラコシの身体をすり抜けたのであった。そして今度はムラコシの突きがタンホイザーを襲った。
「クッ!」
 タンホイザーはそれを後ろに跳んでかわした。軍服をかすめるところであった。だが彼はそれは間一髪でかわしたのであった。
「これはどういうことだ」
「見切りだ」
 ムラコシは言った。
「見切り?」
「そうだ。武道の極意の一つだ」
 彼はそう述べた。
「敵の攻撃を寸前で、最小限の動きでかわす。これは武道を極めた者にしかできないことだ」
「だから残像が残ったのか」
「その通り」
 ムラコシは答えた。
「長い修業によって身に着けたものだ。一朝一夕で身に着けられるものではない」
「そうなのか」
「そして武道にはまだ極意がある」
「それは・・・・・・何だ」
「今それを貴官に見せよう」
 そう言いながら構えをとった。右上段に構える。
 その全身を白い光が包んだように見えた。ウィンザーはそれを見てプレッシャーを感じずにはいられなかった。
「何だ、このオーラは」
「オーラか」 
 ムラコシはそれを聞いて呟いた。表情は変わってはいない。
「そう、これは気だ」
「気!?」
 タンホイザーもウィンザーもそれを聞いて驚きの声をあげた。
「何だ、それは」
「武道は身体だけでなく心も鍛える」
 ムラコシは言った。
「それにより気も使えるようになるのだ」
「そもそもその気というものは何だ?」
「人が皆持っているものだ。さっきオーラといったな」
「ああ」
 ウィンザーの問いに答えた。
「それと同じものだ。武道を極めるとそれを自由に使いこなすことも可能なのだ」
「ではそれをどうやって使うのだ?」
 タンホイザーは剣を構えながら問うてきた。
「それを見せてもらいたいが」
「無論こちらもそのつもりだ」
 ムラコシの目が光った。
「今それを見せよう。行くぞ!」
 そう言うと刀を振り下ろした。一瞬その刀身が白く光ったように見えた。
「覇ああああああああァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
 何と白い巨大な鎌が現われた。それは一直線に飛びタンホイザーに襲い掛かってきた。
「何だとっ!」
「司令!」
 ウィンザーもそれを見て驚きの声をあげた。
「よけて下さい!」
「クッ!」
 だがよけられそうにもなかった。彼は咄嗟に飛ぼうとしたがそれでも避けられないと判断し、剣を構えた。
「どうするつもりだ!?」
「刀から出て来たのならば」
 タンホイザーは構えをとりながら言った。
「これで消せる筈っ!タアッ!」
 剣を上から下に一閃させた。それで鎌を斬った。斬られた鎌はこれにより消え失せてしまった。咄嗟の剣撃により難を避けた形となった。
「まさかそれで気を打ち消すとはな」
「危ないところだったよ」
 タンホイザーは不敵に笑ってそう言葉を返した。
「こんな剣ははじめて見た」
「かっては使える者も多かったという」
 ムラコシはそう述べた。
「かっては無数の剣豪達がいたという」
「どういうことだ?」
「剣を手に戦っていた時代、その頃はこれで生死をかけていた」
 彼は語った。
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