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第十一部第五章 持久戦その十
「全艦迎撃用意」
「全艦迎撃用意」
 シュヴァルツブルグの指示もまた復唱された。
「衝撃に備えよ。よいな」
「了解」
 ティアマト級巨大戦艦の攻撃距離は彼等のそれを遥かに凌駕している。それを考えるとまずは守りを固めなくてはならない。シュヴァルツブルグの指示は当然であった。今までそれにより多くの損害を被り、多数の死傷者を出してきているからだ。損害は何よりも教訓を生むのだ。
 連合軍の陣地から幾千もの光の帯が放たれた。巨砲からの砲撃だった。それがエウロパ軍を打ち据えた。
「怯むな!」
 多くの艦が撃破され炎となり銀河に消えていく中シュヴァルツブルグはそう言って全軍を叱咤した。戦いはまだはじまったばかりであった。
「まだ戦いはこれからだ。怖気づくな!」
「はい!」
 皆それに応えた。そしてすぐに態勢を建て直した。エウロパ軍は崩れるかと思われたがすぐに立ち直った。それを確認したシュヴァルツブルグはまた指示を下した。
「全軍散開!」
「全軍散開!」
 砲艦及びミサイル艦の攻撃をそれで避けた。ダメージを最小限に食い止めるのに成功した。
「まさかここで散開するとはな」
 マクレーンは散開して一斉射撃のダメージを緩めたエウロパ軍を見て呟いた。
「敵ながら見事というべきか」
「しかしそれはそれでやり方があります」
 劉が言った。
「司令、再び砲艦及びミサイル艦の斉射を」
「再びですか」
「はい」
 彼は答えた。
「目標は定めず広範囲に攻撃させて下さい」
「散開しているその場所全体にですね」
「はい。それでダメージを与えましょう」
「わかりました。それでは」
 彼はそれを受け入れて攻撃の指示を下した。絨毯の様な攻撃がエウロパ軍を撃った。だが彼等はそれも耐え凌いだ。
「まだだ、怯むなよ」
 シュヴァルツブルグは艦橋に仁王立ちしていた。その姿はまるで天界に君臨し、雷を振るうゼウスのようであった。
「敵が接近して来た時に一気に集結する。それまで待て」
「はい」
 周りの者がそれに頷く。戦艦、重巡の攻撃も耐え凌いだ。
「来ます!」
「来たか!」
 駆逐艦の魚雷攻撃の後で突進してきた。空母が前に出る。
「全艦総攻撃に入れ!」
 シュヴァルツブルグはここで右手を大きく掲げた。
「敵を粉砕せよ。まずは先鋒に対し総攻撃を仕掛ける!」
「はい!」
 目の前に漆黒の艦隊がいた。サハラ義勇軍であった。
「彼等を打ち破り、敵の司令部まで突き進むぞ!諸君等の健闘を祈る!」
 そう言うとワレンシュタインを突っ込ませた。こうして両軍は激突した。
「フン、総攻撃か」
 義勇軍の司令官マシュハドは突っ込んでくる彼等を見てまずは笑った。
「御苦労なことだ。その闘志は認めよう」
 そしてその戦意を褒めた。無論それだけではなかった。敵を褒めるだけでは済まさないのが義勇軍のならわしであった。
「だがそれだけでは勝てはせぬ。全軍に告ぐ」
 彼は義勇軍全てに指示を下した。
「我等が故郷を奪った不逞の輩共を一人残らず消し去れ。それがアッラーの思し召しだ」
「アッラーの」
「そうだ。これは聖戦だ」
 そしてこう言った。
「憎むべきエウロパの者達をここで完全に打ち破れ!そしてサハラの恨みを晴らすのだ!」
「はい!」
 義勇軍の戦士達がそれに奮い立った。
「この戦い、我々の手によって決めるぞ!アッラーフアクバル!」
「アッラーフアクバル!」
 サハラの言葉が飛び交う。黒い軍が今炎となり突き進んだ。そしてエウロパ軍とぶつかった。
「撃て!」
 エウロパ軍の先頭には騎士団がいた。彼等がまず敢然と突っ込む。
「敵を粉砕せよ!一歩も退くな!」
「はい!」
 オーティスをはじめとした団長達の声が戦場に木霊する。彼等は自ら陣頭に立ち部下の指揮を鼓舞していた。
 それに義勇軍の炎龍やマトロフが殺到する。あまりもの数に星達が見えなくなる程だった。だがそれでも彼等騎士団は怖れはしなかった。
「敵機が来ます!」
「撃ち落とせ!」
 それだけであった。また騎士団の者達もそれに従いエインヘリャルで、ビーム砲座やミサイルで立ち向かう。その見事な戦術で義勇軍の艦載機と五分に渡り合っていた。
 数においてはエウロパ軍の方が上である。元々その数に倍以上があり、その全軍を以って立ち向かっているからであった。だがそれでも多くの戦いを経験してきており、連合においても想像を絶する訓練を受けてきた義勇軍は崩れはしなかった。
「我等にこの程度の数で挑むとは愚かだな」
「全くです」
 マシュハドの言葉にワフラが頷いた。
「我等を倒したければ十倍必要だ。その程度では勝てはせぬ」
 そう言うと艦長に顔を向けた。
「主砲を浴びせてやれ」
「了解」
 艦長は頷いた。それを受けてマシュハドの乗艦ロスタムの主砲が動いた。これもティアマト級巨大戦艦であった。
「撃て!」
「撃て!」
 ロスタムの主砲が火を噴いた。光がエウロパ軍を打ち据える。かなりの数がそれにより光と化した。
「まだだ、撃て!」
 マシュハドはさらに斉射を命じた。他の巨大戦艦もそれに続く。これによりエウロパ軍はその進撃を止められてしまった。
「ぬうう、またしてもあの巨大戦艦か」
 モンフェラートは眼前の怪物を見て歯噛みしていた。
「あの戦艦をまず何とかせねば我が軍に勝利はないか」
 そう言いながら艦長に声をかけた。
「こちらも主砲を使うぞ」
「はい」
 艦長はそれに頷いた。
「一斉射撃だ。よいな」
「了解」
 それを受けてモンフェラートの乗艦ブルードラゴンは動いた。騎士団の団長達は自身の乗艦にそれぞれの竜の名を冠しているのである。赤騎士団ならばレッドドラゴン、銀騎士団ならばシルバードラゴンというふうに。青騎士団なだら当然ブルードラゴンだ。カラーリングもそれぞれの竜にならっている。青い艦がその主砲をロスタムに向けた。
「撃て!」
 ブルードラゴン艦長の指示が下る。幾条もの光の帯がロスタムを襲った。だがロスタムはそれを受けてもびくともして
いなかった。
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