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第二部第一章 策略その四
 ミドハド軍を倒したオムダーマンは治安維持の艦隊を残しその殆どをオムダーマン本土に戻していた。カッサラには更に駐留する艦隊を増やした。
 ブーシル星系には特別に一個艦隊が留まっていた。アッディーンの率いる艦隊である。彼等はここでサラーフに備えると共にこの星系に潜伏しているであろうハルドゥーン元ミドハド連合主席を探していた。
「中々見つかりませんね」
 司令部を置いたブーシルの旧政庁でアッディーンの部下達は司令の前に集まっていた。
「どこにも見当たらないようだな」
 アッディーンも彼等の顔を見回して言った。
「はい。流石は狸親父と言われただけはあります」
 アタチュルクが顔を顰めて言った。
「一体何処に隠れたのか。本当に上手く隠れてますよ」
 シャルジャーの声は苛立っていた。情報参謀である彼にとって今の状況は我慢できないものである。
「苛立つ気持ちもわかるが」
 アッディーンはそんな彼等を宥めるようにして言った。
「ここは落ち着いて探してくれ。焦ると向こうの思う壺だぞ」
「はい」
 一同は彼のその言葉に気を少し落ち着けた。
「あと国境には気をつけておけ」
 アッディーンは表情を引き締めて言った。
「サラーフの動きが妙だからな」
「確かに。既に多くの工作員が入って来ているという報告もありますし」
 ガルシャースプが答えた。
「憲兵隊には抵抗組織と共に彼等にも警戒するよう伝えておけ。おそらく両者は繋がっている」
「はい」
 ガルシャースプはそれに対し敬礼して答えた。
「各惑星間の監視は厳重にしろ。おそらく奴は惑星間を転々としているぞ」
「わかりました」
 これに各分艦隊の司令達が敬礼した。
「とりあえずはこれでいいな」
 アッディーンは考え込みながら言った。
「はい」
 一同を代表してガルシャースプが答えた。
「だがこれだけではどう考えても不完全だ」
「ですね。これ位ではあの男は捉えることは出来ないでしょう」
「そうだ、やはり特殊部隊が必要だな」
 アッディーンは顎に手を当てて言った。
「今首都から派遣されようろしているらしいですけれどね」
「果たして誰が来るのやら」
「我が軍の特殊部隊はそれなりに優秀ですけれどね」
「それはそうだが」
 アッディーンはラシークの言葉に頷いた。実際にオムダーマン軍の特殊部隊は各国の間で定評がある。
「さて誰が来るか」
 アッディーンは考えた。ブーシルは陰の戦いの舞台となろうとしていた。

 当のハルドゥーンであるが彼は大方の予想通りブーシル星系に潜伏していた。
 市庁のある惑星である。その辺境の寒村である。
 そこは特にこれといった騒ぎもなくのどかで落ち着いた村であった。
 その中の一つの小屋。そこに彼は潜んでいた。
「オムダーマン軍はいないか」
 彼はその地下に息を潜めていた。
「はい、今のところは」
 彼の支持者であるその小屋の持ち主が言った。彼はこの村の出身で軍では将校をしていた。同郷のよしみで彼に取り立てられ大佐まで昇進したのだ。軍を退いて暫くは故郷で静かに暮らしていたがハルドゥーンが失脚し故郷に帰って来ると彼を匿ったのだ。
「ですが私の身元も調べられているでしょう。ここにも長くは」
「それはわかっている」
 彼は低い声で言った。
「今も警戒は厳しいが特殊部隊が到着するとこの比ではないだろう。今のうちに場所を移した方がよいな」
「そうされるべきかと」
「うむ。同志達は今どうしている?」
 ハルドゥーンは尋ねた。
「各地に潜伏しております。それぞれ時を窺っております」
「そうか、ぬかりはないな」
「はい」
 彼は頷いた。
「ではここから去るとしよう。今まで世話になったな」
 彼はそう言うと席を立った。
「では私も」
 彼はそれに従おうとする。
「駄目だ。君には家族がいる」
「しかし」
 彼はそれでもついて行こうとする。
「家族がいる者を入れるわけにはいかない。君に何かあれば奥さんや子供さん達はどうなるのだ」
「それは・・・・・・」
 彼は今は農業を営んでいる。家の重要な働き手だ。
「わかってくれたか。君の気持ちは受け取ろう。私は君のご家族が哀しむのを見たくはないのだ」
「わかりました」
 彼はそれに従った。ハルドゥーンはそれを見届けると階段に足を入れた。
「ではな。機会があったらまた会おう」
「はい」
 こうしてハルドゥーンはその村を後にした。変装し村を一歩出るとその左右を男達が取り囲んだ。
「行くか」
「はい」
 彼等は車に乗った。そして山の方に向かった。
「よろしいのですか?」
 彼を左右から警護する男の一人が問うた。
「何がだ」
「彼を連れて行かなくて」
「よい」
 ハルドゥーンはそれに対して素っ気無い声で言った。
「家族がある者は入れてはならぬ。いざという時にそれが足枷になる」
「そうですか」
「そうだ。何も失う者でなければ手駒にはならぬ。下手な愛情に縛られぬからな」
「わかりました」
「ところでサラーフは何と言っておる」
「協力を約束してくれました。まずは武器の供給です」
「そして特殊部隊の増援か」
「はい」 
 サラーフ特殊部隊は諜報部隊から入った者が多い。その為諜報活動に秀でている。
「これで幾らかは粘ることができるな。そしてその間にサラーフ軍がやって来る」
「そして彼等にオムダーマン軍を倒させるというわけですな」
「そうだ、そしてミドハドから奴等を追い出してわしが主席に返り咲く」
「その後でサラーフも追い出すと」
「よくわかっておるな、その通りだ」
 ハルドゥーンはその言葉を聞いてニヤリと笑った。
「ミドハドの復活はじきだ。そしてあのアッディーンという小僧に目にもの見せてやろうぞ」
「はい」
 彼等を乗せた車はそのまま山の方へ消えた。そしてそのまま何処かへ姿をくらました。
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