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第三十七部第二章 宗教界その五
「そういうことでしょうか」
「はい、それならばです」
「そう仰って頂けるとわかります」
 神官も大尉の言葉に返すことができた。
「そういうことですね」
「はい」
 そうだと。大尉は述べた。
「そう考えて頂ければ」
「報いでもありますね」
 神官の言葉は飛躍もした。
「報いですか」
「帝国主義時代の報いです」
 なお神官はかつてはあらゆる国が互いに争ったことを意図的に頭の中から消し去ってしまっている。連合にしろかつてはあらゆる国家が攻め合い戦ってきているのだ。それが歴史なのである。
「それが彼等を今ああしています」
「あの様な状況にですね」
「私はそう考えます」
 やはり彼等を批判するのだった。自分達の歴史のことは置いておいて。彼等にしてみればエウロパの帝国主義時代のことはまさに人類史上最悪の悪行であるのだ。
「その様に」
「左様ですか」
「そうしなければ生きられない様な状況に陥ったこともです」
「因果だというのですね」
「どうもこういう考えは仏教的なのでしょうが」
 それは確かにその通りだった。因果や報いといった考えはまさに仏教のものである。神官自身もそれは心の中でわかっているのだった。
「ですがそれでもです」
「そう思われるのですね」
「我々はそうはなってはなりませんね」
「全くです」
「平和の中で」
 その平和を守護する戦艦に宿る女神を見ての言葉だった。
「誰もがこのまま繁栄していきたいものです」
「それは戦い、かつ祈るものなのですね」
「軍人の方々は戦われ」
 神官は言う。
「私達は祈るです」
「神に対してですね」
「貴方達の勝利を」
 まずはこれであった。
「そして連合の繁栄を」
「その二つをですか」
「祈らせて頂きました」
 言葉が過去形なのは今は戦争をしていないからである。勝利を収めることができた戦いに対して勝利を祈るということも有り得ない話である。
「ですから」
「そうですか。有り難うございます」
「そういえばですね」
 ここまで話してまた話を変えてきた神官だった。
「今四千柱の神々が連合軍を守護していますが」
「はい」
「それだけではないとか」
 こう大尉に問うのだった。
「そういうことはありませんか」
「さて、それは」
 大尉は本当に知らないといった顔で神官に応えた。
「私は何も知りませんが」
「そうなのですか」
「我々は戦うだけです」
 それだけだと。まずは武人らしい言葉であった。
「そして意見を求められれば答える。あとは」
「時としてアドバイスもですか」
「それもあります」
 これもだというのである。
「もっとも只のアドバイスですが」
「専門家としてですね」
「議会に対して意見を出すのです」
 それが連合の文民統制であるのだ。議会は軍人の意見を聞き政府をチェックし政府は軍人に命じ軍人はその考えを議会に述べる。そうした三つの組織を互いに組み合わせて動かしているのである。政府が一方的に軍人をコントロールする二十世紀型の文民統制とは違うのである。
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