第三十六部第五章 二枚刃その十二
「敵の首都を陥落させることはな」
「ええ。それはそうですが」
「王都ですか」
「案ずることはない」
彼はまた言った。
「当初より考えていたことだ」
「当初からですか」
「では作戦開始時より」
「段階的に考えていた」
そしてこうも言うアッディーンだった。
「まずは前線を突破しだ」
「はい」
「ジェルメでの会戦に勝利を収める」
ハサン王国との戦いでの序盤の天王山であった。この戦いで果敢に戦い勝利したことがオムダーマン軍の今につながっているのである。
「そして五つの要塞を突破する」
「それが第二段階ですね」
「今なのですね」
「そうだ。今だ」
はっきりと言ってみせたのであった。
「今がその第二段階なのだ」
「これに勝利を収めれば次は」
「第三段階ですか」
「その第三段階こそが王都攻略なのだ」
こう言うのである。
「そのハサン王国の心臓にだ」
「遂にそこにですか」
「今まで想像もできなかったことが」
「その時に想像できなかったことも状況の推移により現実のものとなる」
アッディーンはここでこう言うのであった。
「今も然りだ」
「では閣下、ここは」
「次の作戦も計画していくのですね」
「ファラーを陥落させればすぐに王都に向かう」
既に彼の頭の中ではその進路まで描いているかの如き言葉であった。
「すぐにだ。いいな」
「はい、それでは」
「それに従い作戦も計画しておきます」
「いや、それには及ばない」
しかし彼はここでこう参謀達に告げるのだった。
「それにはだ。及ばない」
「?といいますと」
「どういうことでしょうか」
「既に私が作戦計画を立てておいた」
こう言ったうえで自分の席の下からあるものを出してみせるのだった。見ればそれは一個のパワーメモリーであった。それを出してきたのである。
「ここにな」
「パワーメモリーですか」
「するとここに」
「そうだ。作戦計画だ」
それそのものだというのである。
「既に考えておいたものだ。ハサン侵攻前にな」
「その時点から考えておられたのですか」
「既に」
「それに従い兵を動かしてもきた」
種明かしにもなっていた。実はそうなのだった。アッディーンは己の立てた計画に基きそのうえでこれまで兵を動かしてきたというのである。
「今までな」
「では王都までもですか」
「進路を定めておられるのですね」
「その通りだ。まずはこれを読んでもらいたい」
「わかりました」
「それではその様に」
参謀達は彼の言葉に頷きながらそのパワーメモリーを受け取った。彼はそれを見届けたうえで今度は提督達に対しても言うのであった。
「それでだ」
「はい」
「我々もですね」
「このパワーメモリーは複数ある」
こう彼等に告げるのだった。
「それぞれ一人一個ずつ回しておく」
「有り難うございます」
「それでは」
「各自よく見て意見があれば言ってくれ」
意見も求めるのだった。その為にもパワーメモリーの中にある作戦計画を見せるというのである。彼も思い切ったことをしてみせてきたのだった。
「それでいいな」
「わかりました。それでは」
「我々もまた」
提督達は彼のその言葉に頷いて応える。こうして参謀達だけでなく彼等もまたアッディーンのこれからの作戦を知ることになった。
人気サイトランキング
小説・詩ランキング
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。