第三十六部第五章 二枚刃その二
「それで彼等の前を塞げ。いいな」
「それも手筈通りにですね」
「さて、どうするか」
ムハークは勝利を確信していた。そうしてその中でまた言った。
「今度ばかりは常勝の青き獅子も。膝を屈する時だが」
「獅子は確かに雄々しく見事な獣です」
参謀もまたそれは同じだった。彼もまた自軍のその勝利を確信しているのだった。その機雷と艦隊、そして要塞の備えを置いてだった。
今オムダーマン軍はハサン軍のアンダハル要塞に向かって進撃していた。その中には当然ながらアッディーンの乗る旗艦アリーもあった。
アリーの艦橋に今連絡が入った。その連絡は。
「機雷が来ました」
「そうか」
その報告を聞いてまずは静かに頷くアッディーンだった。彼は既にオムダーマン軍の青い詰襟の軍服の上に白いマントを羽織りそのうえで艦橋に立っていた。
「我が軍の進路にだな」
「その通りです。夥しい数です」
「モニターに映せるか」
ここでこう今彼がいるアリーの艦橋スタッフに問うたアリーだった。
「今。どうだ」
「はい。映せます」
こう返答が返って来た。艦長からだった。
「映して宜しいでしょうか」
「頼む」
また告げるとすぐに艦橋のモニターに前方が映し出された。そこにあったのは無数の機雷の山だった。それが映し出されたのである。
あまりにも膨大な数だった。それを見てアッディーンは静かに言った。
「隠してはいないな」
「はい、確かに」
彼の今の言葉にシンダントが応えた。参謀達はいつも通りアッディーンの後ろにいた。
「まるでこれは」
「見てくれと言わんばかりだ」
アッディーンは言った。
「まるでな」
「何故でしょうか」
シンダントはここではじめて微妙に思ったのであった。その無数の機雷達を見てだ。
「ここまではっきりと見せるとは」
「そしてだ」
アッディーンはさらに言うのだった。
「艦隊はどうか」
「艦隊ですか」
「そうだ、要塞に駐留する艦隊だ」
彼が問うたのはそれについてなのだった。
「そして要塞の動きはどうか」
「!?そういえば」
ここでシャルジャーは気付いた。彼等は高速で動いていたのであった。
要塞の周りの衛星がオムダーマン軍の左斜め下に、そして艦隊が右斜め上に。それぞれ高速で向かって来たのであった。それに今気付いたのだ。
「艦隊と要塞がもう」
「ここまで来ていますが」
「やはりな」
それを聞いて納得した顔で頷いたアッディーンだった。
「そう来たか」
「そう来たかといいますと」
「総司令、まさか」
「そう来ると思っていた」
こう参謀達に述べるのだった。
「機雷はただそこにあるだけではない」
「あるだけではないとすると」
「見せてあえて動きを止める」
彼は言った。また参謀達に対して。
「それが主な使い方だ」
「主なですか」
「ただそれだけで敵の艦隊を倒すものではない」
アッディーンは今機雷だけを見ているのではなかった。艦隊も要塞もどれも見ていた。そうしてそのうえで参謀達に対して語っていた。
「敵の進路に隠しておくか」
「見せて動きを止める」
「それですか」
「この場合は見せて動きを止めるものだ」
アッディーンの読みは続く。
人気サイトランキング
小説・詩ランキング
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。