第三十六部第四章 機雷の海その二
「ですから我等は守っているだけです、今は」
「それだけで」
「その通りだ。さて、どう来る?」
士官は遥かな銀河を見て不敵な笑みを浮かべてみせた。
「ここで勝利を収めれば一気に攻めることができるからな」
「そうですね」
「一気に攻められます」
彼等はそのまま攻めていくつもりだった。それはもう末端の兵士にまで及んでいた。これは上層部の考えが及んでいるということである。
「ですから今は耐える時ですね」
「敵が来るまで」
「攻めて来ないということはないからな」
士官はまた言った。
「ここには来ているのだな」
「はい、来ています」
「それは間違いありません」
このことは確かだとわかっているのである。
「その大軍で以ってです」
「掃海艇及び砲艦、ミサイル艦を連れて」
「それでどうして戦うのか」
士官の言葉は続く。
「見せてもらおう」
「はい、それでは」
「今から」
「それでだ」
話が終わると士官は別の話をしてきた。それは。
「それで聞きたいことがあるのだが」
「はい」
「何でしょうか」
「今日の昼食は何だったか?」
問うたのはこのことだった。実はまだ昼食も済ませていない時間なのだった。
「確かクスクスだったか」
「ええ、確か」
「それとパンだったと思います」
「後は」
艦橋のスタッフが彼の言葉を受けて話す。
「モロへイアを炒めたものですね」
「それとバターです」
「そういうメニューか」
「あとデザートは蜜をこれでもかとかけた三角のドーナツです」
「それだけです」
「デザートもいいものだな」
士官はそれを聞いて静かに頷いた。
「楽しみになった」
「ああ、他にはですね」
「肉もありました」
それもあるというのだった。彼等もうっかりしてそれを忘れてしまっていたのだった。
「羊の肉の欧風カツです」
「それもありました」
「相変わらずのボリュームだな」
士官はメニューを全て聞き終えて納得した顔になるのだった。
「それだけあればな。満足できるな」
「はい、やっぱり食べないと動けませんからね」
「我が軍は食事はいいので有名ですから」
これはサハラの中で、という意味である。連合軍と比べるとかなり劣るのは否めない。軍の食事はその国の平均になってしまうものだ。若しくはやや下か。他国への体面があるからそうしたレベルになるのだ。だからハサン軍の食事もおおむねそうなっているのである。
「有り難いですね、毎日ふんだんに食べられる」
「それも美味いものが」
「オムダーマン軍は違うらしいな」
士官はここでこうも述べたのだった。
「何でも相当質素らしいな」
「ああ、何か碌なものじゃないらしいですね」
「犬の餌にも劣るとか」
かなり露骨にオムダーマン軍のことを馬鹿にする。敵国の軍を愚弄するにはまず食事からというのはこの時代でも同じである。
「あんなものを食べていては」
「士気が出ません」
「それで今まで戦えたものだ」
士官もまたその愚弄の波の中に入るのだった。
人気サイトランキング
小説・詩ランキング
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。