第三十六部第三章 亡命という選択その十六
「どちらがいいとも悪いとも」
「分裂して戦乱が続けばだ」
「はい」
「難民達が生じるな」
その連合の社会問題になっている彼等のことがまた語られる。
「それは厄介なことだ」
「それにです」
さらに言う八条だった。
「やはり我等の権益がその度に阻害される恐れが生じます」
「サハラに進出している企業のだな」
「連合軍はサハラに入ることはありません」
「その通りだ」
「サハラはサハラです」
この考えは何があろうとも消えないものだった。
「それに対してどうするかは」
「軍としては何もできはしない」
「今まで通り各国政府と取り決めるだけです」
それだけだというのだ。
「我が国の権益、市民に対しては何もしないと」
「言うならば居留地には攻撃しないということだな」
「そういうことです」
実際に権益のある場所は連合の者達にとっては避難所、居留地になっている。いざとなればそこに逃れるのが常となっているのである。
「ですから」
「それでは問題が生じることも多い」
また言うアッチャラーンだった。
「実際にその権益が脅かされたこともあったな」
「過去そうした国家もありました」
「その都度複雑な外交問題をもたらしてきた」
「サハラへの進出には保険が効きません」
ハイリスクハイリターンというわけだ。それを嫌って進出する企業も少ないというのが実際の状況であるのだ。しかし進出する企業もあるというのも事実なのだ。
「ですから」
「自己責任と言い切ることもできるが」
「それはあまりにも酷ですし」
ここでは政治的な判断とはまた別の判断が含まれた。
「それにそういう理由で切り捨ててもです」
「道義の問題としまして」
「できるものではない」
「その通りです」
こう述べる八条だった。
「ですからそれもまたです」
「今の戦いでは三国共了承してくれたがな」
「何よりも交渉する時間がありました」
ここでカバリエが話に入って来た。
「それにより権益も市民達の安全も守ることができました」
「時としてそれは不可能になる」
アッチャラーンはカバリエに対しても述べたのだった。
「どちらか、それとも双方が急襲を仕掛ける場合にはだ」
「しかも戦略的用地に権益の場があった場合は」
「時としてそこが襲われた」
そうしたことがあったのである。千年の間には。
「色々なことがあったな」
「全くです。ですから分裂はです」
八条はここでまた告げてきたのだった。
「戦乱に巻き込まれてしまう恐れが付き纏います」
「そして統一された場合は」
「少なくともそれはありません」
戦乱に巻き込まれることは、ということである。
「それはです」
「それを聞くといいことだが」
「しかしです」
だが八条はここで言うのであった。
「統一されら彼等が我々に敵対的な国家であった場合は」
「もう一つ敵を持ってしまうな」
「そうです。エウロパの他にです」
持ってしまうというのである。
「これもまた厄介なことです」
「そうだな。その時の為に今国境の護りを固めているな」
「名目は難民達の保護の為であります」
八条はその名目で語るのだった。
「あくまで名目でありますが」
「真実は、ということだな」
「そうです。真実は彼等への備えです」
既に中央政府の閣僚達の中では常識になっていることだった。八条はその常識になっていることをここで語るのであった。あえてであった。
「その時に備えています」
「いいことだ。それはな」
「有り難うございます」
「備えあれば憂いなしだ」
アッチャラーンは古い諺も出してみせた。
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