第三十五部第五章 サハラの軍律その十七
「それだけではな」
「というとそれは」
「どういうことですか?」
二人の弟は長兄の言葉に首を捻ってしまった。
「留学生だけではないのですか?」
「それだけではないとすると」
「前にも言ったか。私も行きたい」
こう言うのである。
「私も連合にな」
「いえ、それは幾ら何でも」
「冗談が過ぎます」
弟達はこう言って彼の言葉を否定するのであった。
「できる筈がありません」
「そうです、それはかなり」
「そう思うのか」
こう話されてそのうえで弟達の顔を見るシャイターンであった。
「このことに関しては」
「はい」
「違いますか?」
彼等の返答はそれが常識あるということを既に内包しているものであった。
「やはり。兄上御自身となりますと」
「そのようなことは過去には」
「例がないというのだな」
ここでまた弟達の顔を見るのであった。
「過去にそのようなことは」
「はい、その通りです」
「御言葉ですが」
そして彼等の返答は彼の予想した通りのものであった。
「サハラの歴史、いえイスラム開闢以来」
「それはなかったことです」
「いや、あった」
だがここで。シャイターンはその弟達に対して告げたのだった。
「それはな。あったのだ」
「あったのですか?」
「それは」
「アラブ、いやサハラの歴史ではない」
まずこのことは言うのであった。
「それはな」
「ではやはりないのではないですか?」
「そうです」
「歴史はアラブ、そしてサハラだけではない」
しかしシャイターンは弟達にこう告げるのであった。
「それはな。ないのだ」
「それはそうですが」
「連合にしろエウロパにしろ」
弟達もこうしたことはわかっていた。歴史がサハラだけのものではないということは。これはもう言うまでもないことであった。世界は一つではないのだ。
「それにマウリアもあります」
「彼等の歴史が」
「答えはそこにある」
シャイターンの言葉がここで止まったのだった。
「そこにな」
「といいますとそれは」
「どの勢力にそれがあるのですか?」
「連合とエウロパだ」
シャイターンが出したのはその二つの勢力であった。人類の歴史において激しく対立し合ってきているその二つの勢力がそうだというのだ。
「彼等にそれぞれある」
「連合と」
「そしてエウロパに」
フラームもアブーもそれを聞いてまずは首を傾げさせるのだった。
「あったのですか」
「そういった事例が」
「いや、違うな」
しかしここでシャイターンの言葉が少し変わったのだった。
「どちらも連合だ。行った場所はエウロパだが」
「連合にそのようなことをした国家があったのですか」
「しかも二つもですか」
こう言われてもフラームにもアブーにも今一つわからなかった。どの勢力かというとだ。はっきりとどの国家かわかりかねていた。
「そういうことをしそうな国家は連合には」
「何処でしょうか」
「まずはロシアだ」
シャイターンが最初に出した国家はそこであった。
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