第三十五部第四章 軍律研修その十五
「では我々もそのように」
「致します」
「そうしてくれ。よいな」
「はい、わかりました」
「それでは」
将官達は座っており室内でもあったので帽子を脱いでいる。だから敬礼はしなかったがその言葉で以って彼に応えるのであった。
「そうしてくれ。そしてだ」
「はい。お話はまだあるのでしょうか」
「だとすればそれは」
「いや、もうない」
それはないというのだった。
「私からはな」
「左様ですか」
「ただしだ」
だがここで言い忘れていたのか言い加えることを述べてきたのだった。
「この将官の研修についてだが」
「はい」
「これはくれぐれも迅速に頼む」
こう言うのである。
「くれぐれもな。迅速にだ」
「迅速に、ですか」
「やはり将官もまた己を鍛えるべきなのだ」
身体という意味ではなかった。それだけの留まらない考えを持つというのがやはりサエグサという男だった。軍人としての視点から考えたうえでだ。
「己をな。だからこそだ」
「ではすぐ長官に上奏しましょう」
「教育部の決定として」
「すぐにな。上奏するべきだ」
彼はまた部下達に告げた。
「それを頼むな」
「わかりました」
「連合軍は第一に軍規軍律だ」
これが彼の考えであった。
「それが確かでなければ最早意味がない」
「ええ、それはその通りです」
「まずは軍規です」
「そして軍律です」
サエグサの部下達だけはあってそれはよくわかっているのだった。これは彼のその軍人としての生真面目な性格にいい意味で影響を受けてのことなのだ。
「ですからすぐにも」
「そうしましょう」
「幸いにしてエウロパ軍との戦いにおいてはだ」
「はい」
連合軍、いや連合という国家ができてはじめての戦争である。連合にとっては千年の長きに渡った平和を経ての戦争でありそのモラルも問われるものだったのだ。
だが連合軍は少なくともそのモラルにおいては合格であった。損害の少なさよりもその醜い行為の少なさこそがサエグサが満足したことだったのである。
「醜行は非常に稀に終わった」
「やはり軍規軍律を徹底していたからですね」
「そしてその教育も」
「あの時の時点で既にそうだった」
そうだったのである。これは八条がとにかく正規軍には軍規軍律を叩き込むことを徹底させたことが非常に大きかったのである。
「そしてそれ以上にだ。今はな」
「高潔であれ、ですか」
「武器を持って戦うのはそれからだ」
彼はこうまで言うのだった。
「心の醜い者に武器を持つ資格はない」
「それはないというのですか」
「心が醜ければ」
「我々は何だ」
サエグサは部下達に対して問うてきた。
「我々はだ。何だ」
「はい、連合軍です」
返答は一つしかなかった。
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