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第九部第四章 婚礼その一
                婚礼
 連合とエウロパの戦いがはじまって二月が経過しようとしていた。その間連合の進撃は止まらずエウロパの星系を次々と掌握していった。数において劣るエウロパは押され撤退を続けていた。そしてジリジリと西へと退いていっていた。
 こうした状況を打開しようとあらゆる手段が講じられた。だがそれはどれも有効なものとはならずエウロパ軍は敗退を続けていた。そして損害ばかりが増えていたのである。
「参ったことになったな」
 ラフネールは自分の執務室にかけてあるエウロパの三次元地図を見てそう呟いた。
「また一つ星系が陥落してしまった」
「はい」
 彼の前に立つモンサルヴァートがそれに対して頷いた。
「由々しき事態なのは承知しております」
「それは私もだ」
 ラフネールは苦い声でそう言葉を出した。
「やはり物量の差は如何ともし難いか」
「それだけではありません」
「というと」
 モンサルヴァートの言葉に顔を向けさせた。
「兵器の質がこちらと比較してかなりの違いがありまして」
「技術はそれ程差はない筈だが」
「おそらく下地となる国力の差が出ているのでしょう。我が軍の兵器と比較しまして攻撃力、防御力がまるで違います」
「どれだけ違うのだ」
「敵の駆逐艦や護衛艦が我が軍の軽巡程だと言えばお解りになるでしょうか」
「そんなに違うのか」
「はい。陸上兵器もかなりの武装と防御力を持っております。その為一隻一隻、一両一両の撃破が困難な状況です。それが我が軍と比して圧倒的な差でやって来るのです」
「速度等はどうかね」
「それは我が軍の方が勝っております。ですが電子や哨戒においても大きく差がありまして」
「そこまでくると話にもならないな。どうやら連合の力は我々が思っていた以上だったようだ」
「残念ながら」
「それにあの巨大戦艦もいる。相当な力を持っているようだな」
「はい。先日のことですが」
「何かあったのか」
「先日補給の為に後方に退いていたあの巨大戦艦一隻をこちらの一個艦隊で急襲したのですが」
「その話詳しく聞かせてくれ」
「わかりました」
 彼はそれを受けて話をはじめた。それはこうしたものであった。
 連合軍の攻撃が続く中一隻のティアマト級巨大戦艦が後方に退いた。それは補給を受ける為であるその艦はその補給基地のある惑星へと向かった。その途中でそれを察知したエウロパ軍の一個艦隊が急襲を仕掛けたのである。
 その数およそ一万隻。対するは巨大戦艦とはいえ僅か一隻である。誰もがこれならば容易に沈めることができると思った。思っただけであった。
 一隻だけしかいないのを見たエウロパ軍の司令官はすぐに攻撃を命令した。すぐに一万隻の艦艇が巨大戦艦を包囲しようとした。しかしここでその巨大戦艦が動いたのであった。
 この艦の名をダーザといった。ケルト神話に出て来る神の名である。ケルトにおける神々の父とも言われる好色でありながら強力をも併せ持つ魅力な神である。オートミールを愛し様々な神の道具を持つ。この神が持つオートミールを出す釜がキリスト教、とりわけアーサー王等の騎士物語やワーグナーの楽劇に出る聖杯のもととなったと言われている。そのダーザの巨砲がまず火を噴いた。
 それによりまず一千隻近くの艦艇が破壊された。そして主砲の一斉射撃によりさらにダメージを受けた。それでもエウロパ軍の艦艇は進んできたがそれはブレスのミサイルと副砲により阻まれてしまった。そしてさらに近付くと艦載機の攻撃を受けた。一万隻の艦艇が一隻の戦艦により動きを阻まれてしまったのだ。
 そこに連合軍の援軍が来た。それを受けてエウロパ軍はやむなく撤退を開始した。巨大戦艦一隻で一個艦隊を退けたのであった。このことは連合においては広く宣伝されていた。
「ティアマト級巨大戦艦は一個艦隊に匹敵するとさえ言われているそうです」
「成程な」
 ラフネールは話を聞き終えて頷いた。
「いい宣伝になっているな、向こうにとっては」
「はい」
 モンサルヴァートは頷いた。
「結局その戦艦には傷一つつけることはできませんでしたから。今まであの艦の戦闘力は知っていたつもりでしたが」
「それでもやられたのか」
「そういうことになります。単なる局地戦では済まない衝撃を我が軍に与えております」
「しかし不沈戦艦なぞこの世には存在し得ない」
「はい」
「必ず沈める方法がある筈だが。一隻でも沈めることができればいいのだがな」
「あの艦の巨砲はコロニーレーザー以上の射程を持っておりまして。それによりコロニーレーザーも破壊されてしまっております」
「それはまた厄介だな」
「はい。我々もそれに頭を悩ましております。あの艦は完全に連合軍の象徴として存在しております」
「強力な連合軍のな、彼等にとってはよいことだ」
「ですね。しかし我々にとっては」
「言うまでもない。一隻でも沈められれば我が軍の意識も変わるだろうがな」
「今では彼等はあの巨大戦艦を先頭に軍を進めてきております。我が軍は退くことはありませんが」
「劣勢なのだな」
「否定しません。その通りです」
「わかった。それで今彼等は今北ではヴァルハラ、中央ではブレシア、そして南ではモントローズ要塞に迫ってきているな」
「はい。とりわけモントローズ要塞への進撃が迅速であります」
 地図を見ながら問うラフネールに対しそう答えた。
「その先頭にはやはりサハラ義勇軍がおります」
「全ては彼等が先陣か」
「そうです。彼等は正規軍と比べてもかなりの強さです。まあ連合軍正規軍は今のところ彼等に露払いを任せておりましてそれ程前線には出ては来ないのですが」
「だろうな。私でもそうする」
 ラフネールはそれを聞いて呟いた。
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