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第三十五部第三章 教育者その十二
「それでこうして」
「食べるというのか」
「そうです。幼い頃から母によく言われました」
 その金の母だ。金はごく普通の銀行員の家庭に生まれている。幼い頃から頭脳明晰として知られ韓国の超一流大学を首席で入学し首席で卒業している。そうして官公庁に入りそこで見る見るうちに頭角を現わした。それにより当時の韓国政界の領袖の一人に見込まれそのうえで政治家になった。そして韓国政界から中央政界にスカウトされ今こうして連合中央政府の内相になっている。そうなのだった。
「甘いものを食べられるうちは人間は大丈夫だと」
「それは肉ではなかったのか?」
「肉でも何でもです」
 金はこうも言うのだった。
「そういうものを食べられるうちはです」
「大丈夫なのか」
「国家としても個人としても」
 どちらについても当てはまる言葉だった。
「甘いものをふんだんに食べられるうちは人は大丈夫だと言われましたので」
「そう御母堂に言われたのか」
「はい、私を育ててくれた母が」
 その言葉には尊敬があった。
「そう教えてくれました」
「そうか。そういうことだったのか」
「それで幼い頃より食べてきました」
 それだけの甘いものをである。これで栄養が偏らないのは他のものもふんだんに食べているからに他ならない。彼女も途方もない大食であるのだ。
「甘いものは私にとってはまさに命の源です」
「韓国といえばあの辛い料理だが」
 韓国料理の辛さはこの時代でも健在である。
「それは」
「無論それもあります」
 韓国人ならばそれは知っていて当然だった。韓国料理というものの辛さは唐辛子によるものだが金はそれも幼い頃からよく知っている。
「ですが辛いものがあればある程」
「甘いものもか」
「それもあります。ですから」
 だからだというのである。こういう理由もあった。
「甘いものが余計に」
「そういうことか。それにしても君は」
「私は?」
「普段はあまり辛いものを食べないな」
 今度指摘したのはそこだった。
「今さっきもチキンカツは」
「辛いものは食べなくとも平気なのです」
 これが金の今度の返答だった。
「私は。韓国人ですが」
「それよりも甘いものか」
「そうです。何につけてもそれです」
 金の場合はそうなのだった。
「それがなくては」
「わかりはしたが」
 クロウザップのところにもデザートが来た。それはアイスクリームだった。バニラよりもさらに白いそのアイスクリームを見て金は言った。
「豆腐のアイスクリームですね」
「そうだな」
 クロウザップは金のその問いに頷いた。
「これはな」
「私はそれも好きだったりします」
 豆腐のアイスもなのだった。
「豆腐はいいものです。甘いものにも使えます」
「淡白だからな」
 それが豆腐のいいところだ。味が淡白で非常に食べやすい為どんな料理にも使えるのだ。だからこそ和食において非常に重要な位置を占めているのである。
「その淡白さによって何でも使える」
「そうです。ですから私も」
 好きだというのである。
「ですが今は」
「そのパフェか」
「はい、そしてケーキです」
 そのロシアンケーキも運ばれてきたのであった。古の塔を思わせる巨大なパフェはもう食べ終えられようとしている。まさしく一瞬であった。
「私のものを食べます」
「わかった。それではな」
「この食事が終わってからですが」
 話はもうその後にいっていた。
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