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第三十五部第一章 各国の法その十四
「この場合が軍が先か」
「司法が先かですか」
「おそらくどちらが先になっても揉めたでしょう」
 レビはまた話してきた。
「司法が先でも軍が先でも」
「どちらもですか」
「そうです。言うならこれは両輪では?」
 レビは考えながらまた述べた。
「軍と司法は」
「実際の法とそれを守らせる力ですか」
「法があるだけではそれを守らない者がいます」
 法を無視して何かをしようとする者はどの世界にもいる。だから犯罪がこの世に減らないのである。世の中無法者も常に存在しているのだ。
「そうした者に対しては強制しかありませんので」
「警察だけでは足りませんからな」
「確かに」
 警察もまた軍の力が背景にあってこそである。時代によっては軍も警察も全く同じ存在であったケースもある。それだけ近いものもあるのだ。
「だから軍もですか」
「確かにテロリストや宇宙海賊には必要です」 
 これは誰もが認めるところであった。それこそそうした無法者と関係がある者以外はだ。誰もが認めるものであるものである。
「そして軍も」
「軍も?」
「コントロールされなくてはなりません」
 レビはここでまた言った。
「万全なコントロールをです」
「法律によってですか」
「法によるコントロールの無い暴力組織はそれ自体が災いです」
 レビの言葉は歴史において証明されているものの一つであった。例えばゲシュタポやKGBだ。彼等は超法規的な存在であり無法が許されていたのだ。全体主義国家では言論弾圧や思想統制、粛清の為にそうした組織の活動まで許されていたのである。
「ですからそれがなければ」
「ですが軍のコントロールは既に」
「完成されています」
 連合軍設立の際に真っ先に整えられたものであった。
「あらゆる事態を想定してですな」
「あれもまたあの長官殿の卓越したところです」
「全くです」
 ここが八条の非凡なところの一つであった。彼は組織を作るだけでなくその組織を法律によりコントロールする法を整えていたのである。
「そこまで考えているのですから」
「普通はそこまではいきませんからな」
「そこまで考えが及ぶことも」
 これは明治維新の日本においてもであった。この時代の日本は近代軍を設立し大日本帝国憲法も発布している。しかしここで問題があったのはこの憲法が早急に整えられたものであり不備な点は元老達が補っていた。元老達が生きている間はよかったがその元老達、とりわけ陸軍を統括する山縣有朋がいなくなると軍が暴走しだした。彼等は憲法に自分達をコントロールするものがないと気付いたからだ。
 大日本帝国憲法において軍は天皇陛下に直属するとある。内閣にはないのだ。それまでは元老達と実質的に彼等が選び後見する首相が統括しているからそれに誰も気付かなく問題なく運営されていた。しかし彼等がいなくなるとそこでその綻びが露わになったのだ。
 結局不磨の大典なぞ有り得ず人の作ったものは必ず欠点がある。戦前の日本はこれにより悲劇を招いてしまった。憲法の欠陥がその大きな問題点の一つであったのだ。
「完全な文民統制を導入しています」
「しかも有事においてすぐに動けるような」
「実際にそれに基き多くの海賊やテロリストを鎮圧してきました」
 そこも考えていたのが八条なのだった。
「そしてエウロパとの戦争も」
「迅速に進められました」
「ただ軍律を整えるだけではなかったのですからな」
 軍律だけでなくこうした法整備を整えなくてはならないのが軍なのだ。
「あの長官にはやはりかないませんな」
「ですな」
 顔を見合わせて言い合う一同だった。
「しかしそれに勢いを得て司法に入るとなると」
「我等は対抗しましょう」
「すぐにです」 
 またレビが話す。
「米中露にも話しておきますか」
「ブラジルにも」
 ブラジルもまた連合における大国の一つである。
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