第三十四部第四章 女虎の最期その五
「いいな。あくまで武器を持つ者と戦え」
「はい、それではそのように」
「捕虜に対しても」
彼等は口々にシャイターンの言葉に頷く。こうしてアヤグーズ軍の将兵に対する処遇が確認されそのうえでさらに進撃するのだった。
ティムール軍はさらに王宮の中を進む。しかしアヤグーズ軍の反撃は粘り強く一室一室を占領するにあたってもティムール軍の将兵達は夥しい時間と犠牲を払っていた。
「くそっ、催涙弾を放て!」
「は、はい!」
部屋に入ろうとするとすぐに銃撃が来て先頭の兵士が胸を貫かれた。後続の兵士達がすぐに彼を安全な場所に運びそのうえで将校が指示を出した。
すぐに部屋の中に催涙弾が投げ込まれる。白い煙が部屋の中を満たす。その中をガスマスクを着けた兵士達が突入し咳き込む敵兵達を射殺していく。
胸に銃撃を受けた兵士は重傷であった。しかし何とか心臓は外れており生きていた。
「おい、しっかりしろ!」
「すぐに医療兵が来るからな!」
「は、はい」
その兵士は上官達の呼び掛けに何とか反応していた。とりあえず息はあった。
「すいません、こんな目に遭ってしまって」
「いや、いい」
下士官の一人が彼に告げた。
「名誉の負傷だからな」
「そうですか」
「それより生きろ」
彼は負傷した兵士に言った。
「生きろ。いいな」
「生きるんですか」
「帰ったら結婚するんだろう?」
そして兵士に問うのだった。
「帰ったらな。だから今はだ」
「生きるんですか」
「幸せになりたかったら生きろ」
彼はまた言った。
「いいな。絶対にだ」
「わかりました。何とか」
兵士は医療兵に運ばれ後方で治療を受けた。何とか一命は取りとめそのうえで戦場を離脱した。ティムール軍もかなりの戦死者や負傷者を出しながらも何とか王宮を進んでいた。しかし犠牲は増えるばかりであった。それを受けてシャイターンの指示は変わらなかった。
「そのまま進め」
「ですが主席」
「損害が二割を超えました」
周りの者達が言うのだった。シャイターン自身もその手に銃を持っている。それを放ったこともこの戦いにおいて二度や三度ではなくなっていた。
「このまま進むとさらに」
「それでもこのままですか」
「そうだ。元より毒ガスの類は持ってはいない」
「はい」
ティムール軍にはそうしたものはない。サハラにおいてBC兵器は使用を厳しく禁じられており開発もとっての他になっているのである。
これは連合でもエウロパでも同じでマウリアにおいてもそうしたものの開発はないのだ。だからこそここでシャイターンは言うのだった。
「何があろうともな」
「そうですか。このままですか」
「そうするしかない」
こうも言った。
「攻めていくぞ」
「それではこのまま」
「援軍を入れるのだ」
これが今の彼の指示だった。
「不足した戦力はな」
「そうして徐々にですね」
「そう。徐々に先に進む」
彼はまた言った。
「当然私もだ」
「主席もですか!?」
「ですがそれは」
「何度も言うが危険は承知のことだ」
それはもうわかっているというのだった。彼は実際に今も発砲した。それにより前にいたアヤグーズ軍の将兵を撃ったのだった。
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