第三十四部第三章 仲介は聞かれずその二十五
「私にはそれは」
「おわかりでしたか」
「私を軍人として迎えられるおつもりでしたね」
「!?」
大使は今のブルコルジの言葉に思わず眉を動かした。実はそうなのだがこれはトップシークレットだった。しかし彼女はそれをわかっていた。このことに驚きを隠せなかったのだ。
「何故それを」
「やはりそうでしたか」
大使は思わず真相を話してしまった。だがそれは今に至ってはどうでもいいことだった。何しろ事実なのだから。事実には何者をも勝てはしない。
「そのように」
「そうです」
大使は言ってしまったその苦い顔で述べた。
「国防長官が。降伏の仲裁を提案され」
「やはり」
「そして陛下を義勇軍の指揮官として。元帥として」
「有り難き御言葉です」
そのことを確かめて満足したような顔になった。
「私のことを認めておられたのですね」
「もう述べさせて頂きますが」
大使もここまで言っては覚悟を決めた。何もかも隠す必要はないことがわかり思い切って言ったのだった。これは決断であった。
「長官は陛下の才を御存知でした」
「私のですね」
「その軍事的才能を」
彼が見ているのはそれだった。他の連合の者達が気付かないこのことを見ておりそれを的確に動かそうとしていたのである。
「ですから。義勇軍に陛下を」
「そのお気持ちだけを受け取らせて頂きました」
ブルコルジは言った。
「それを今」
「左様ですか」
「人は認められることを喜ぶもの」
これこそが最上の喜びの一つだと古来から言われている。かつて唐代初期の功臣の一人である魏徴は己の詩に詠っていた。人生意気に感ず、と。これはその喜びを詠ったものである。
「ですから。一度御会いしたいものでした」
「ではこのことは長官に」
「宜しければお伝え下さい」
こう大使に告げた。
「このことを」
「はい、それでは」
これでモニターを通しての話し合いは終わった。結局連合にとっては不本意な結果に終わった。すぐに戦闘が再開されブルコルジも指揮所に戻った。王宮に降り注ぐ砲弾や炸裂するビームはさらに激しさを増していた。
アヤグーズが降伏勧告を拒絶したことはすぐに八条にも伝わった。彼はこの時首相であるアッチャラーンと話をしていたが話を聞いてまずは小さく息を吐き出した。
「そうですか」
「仲裁は失敗に終わったな」
「はい」
アッチャラーンの言葉に対して頷いた。
「その通りです」
「残念なことだな」
「はい、全くです」
また息を吐き出して述べた。
「私としましてはです」
「ブルコルジ女王を死なせたくなかったか」
「彼女は優れた軍人です」
彼は今度はブルコルジについて述べた。
「あの才があれば。義勇軍でも」
「義勇軍に欲しかったのか」
「今だから申し上げられますが」
彼はここで己の考えていたことを話に出したのだった。
「彼女を義勇軍の将に迎えるつもりでした」
「義勇軍のか」
「はい、艦隊の総司令官として」
考えてあった役職についても述べた。
「迎え入れるつもりでした」
「そうだったのか」
「階級は元帥でした」
階級についても言った。軍人ならば必ず階級というものがついて回る。だからこそ彼女に関しても階級を考える必要があったのである。
「そうするつもりでしたが」
「元帥で義勇軍艦隊総司令官か」
アッチャラーンは話を聞きそれをまとめたうえで言った。
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