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第三十四部第三章 仲介は聞かれずその十五
「いいな。それだけ集める」
「はい、それでは」
「女王は。残念だが」
 このことはどうしても頭から離れなかった。諦めてはいてもだ。
「問題はこれからだ。すぐに大規模に傭兵を集める」
「はい」
「そのうえでまずはティムールを倒す。いいな」
「わかりました」
「それだけだ。それではな」
「はい。それでは書類は」
「こちらで処理しておく」
 スタッフが持って来ていた書類に関しても答えたのだった。
「こちらでな」
「はい。では」
「用件はこれで終わりだな」
 あらためてスタッフに問う。
「では。下がってくれ」
「わかりました」
 こうして彼とスタッフの話は終わった。一人になった彼は自室で深い溜息をつくことになった。
「仕方ないか」
 一言だったがそれが全てになった。溜息をついた後で仕事にかかる。それで己の感情を胸の中に押さえ込んだ。そのうえで元の自分に戻るのだった。 
 その頃アヤグーズの首都アッサルームでは。連合からの通信が届いていた。それはアヤグーズ軍だけでなくティムール軍にも届いていた。
「停戦か」
「はい」
 当然ながらこの通信のことはすぐにシャイターンにも伝えられた。シャイターンは前線で指揮を執りながらそれを聞いたのだった。
「その仲裁を申し出ていますが」
「連合がか」
 シャイターンはそれが連合からのものであることをまず考えたのだった。
「何故でしょうか」
「連合がここで仲裁に動いたことか」
「はい」
 彼に問うた参謀はその言葉に応えて頷いた。
「そうです。それは何故でしょうか」
「それはすぐにわかる」
 シャイターンはそれを聞いても冷静だった。
「目的は一つしかない」
「目的ですか」
「そうだ。目的だ」
 また言うシャイターンだった。
「その目的もまたわかっている」
「それは一体?」
「女王だ」
 彼はすぐにそうだと見抜いていたのだった。この辺りの勘の鋭さは流石だった。
「彼等は女王が欲しいのだ」
「女王をですか」
「そうだ。何故欲しいかというと」
 彼の言葉は続けられる。
「その軍事的才能を欲しいのだ」
「軍事的才能!?」
「まさか」
 参謀達はそれを聞いて一斉にその眉を顰めさせた。
「連合に軍事的才能なぞ」
「まさか」
「だがそのまさかだ」
 彼の返答は揺るがない。絶対のものがあった。
「彼等は。女王の軍事的才能を欲しているのだ」
「あの連合がですか」
「それはまた何故」  
 参謀達にとってはわからない話だった。実は彼等も彼等なりに何故連合が彼女の才能を欲しているのか見当をつけてはいた。この短い話の中でだ。
「その美貌ではないのですか?」
「若しくはその識見」
「難民達の象徴として」
 彼等の見方はハサン太子と同じだった。彼等にはその自覚はないにしろだ。それでも彼と同じ見当になっているのだった。これにも理由があった。
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