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第三十四部第二章 風の変化その二十一
「ですが後継者にはいいと思います」
「私もです」
「君達もそう思うのだな」
 ブワイフは二人の賛成の言葉を聞いてその目で彼等を見ながら述べた。
「そうか。それではだ」
「次期大統領としては最適です」
「あの方以外にはありません」
 二人はまたブワイフに述べた。
「オムダーマンの今後を担えるのは」
「まさにあの方だけです」
「その通りだな。しかし今はまだ時期尚早か」
「戦争中ですので」
 ハラーイブはその理由を述べた。
「ですからそれは」
「それが終わってからか」
「そして勝利を収めたならば」
 話はらに限定されはした。
「その後で宜しいでしょう」
「戦勝と新たな大統領の就任が二つになります」
 シカールも述べた。
「当然その直後に信任を問う選挙が必要になりますが」
「しかしそれはもうただの通過儀礼だな」
 ブワイフはそれについては何でもないと言うのだった。
「戦争に勝利した最大の功労者にとってはな」
「はい。そしてオムダーマン最大の英雄にとっては」
 ハラーイブの今の言葉は決して誇張ではなかった。今やアッディーンはオムダーマンにおいて絶大、いや圧倒的なまでの人気を持っているのだ。それは北方におけるシャイターンのそれにも匹敵する。まさに両者はサハラを二分する英雄になっていたのだ。
「選挙なぞその程度でしかありません」
「だからそれは意に介さなくていい」
 ブワイフはまたこう言った。
「選挙はな」
「それでは戦争の後で」
「彼がアスランに戻りすぐに伝えよう」
 ブワイフはその時のことを思いながら述べた。
「その時にな。それでいいな」
「はい、それでは」
「その様に」
 二人はまた彼の言葉に応えて頷くのだった。
「話を進めていきましょう」
「その準備も」
「戦争は終わってからが本当の戦争のはじまりだ」
 ブワイフは今度は腕を組んで述べた。
「それからがな。政治の戦争だな」
「はじめる前も大変ですが」
「終わってからもですから」
「全くだ。いつもながら苦労させられる」
 今の言葉には苦笑いが入っていた。
「ただ戦争に勝てばいいのではないのだからな」
「政治の手段でしかありませんので」
 ハラーイブのこの言葉は生粋の政治家ならではの言葉だった。
「どうしてもそうなります」
「そうだ。それではだ」
「はい」
「まだどうなるかわからないが」
 少なくとも今は戦闘中だ。それから先は断言できない。どれだけ勝っていようとも最後の一戦で敗れてはどうにもならない。それもまた戦争なのだから。
「用意はしておくとしよう」
「このことは閣下には」
 シカールはアッディーンのことも話に出してきた。
「どうされますか?お伝えしますか?」
「いや、それには及ばない」
 だがブワイフはそれはいいとしたのだった。
「今は我等三人だけの話にしておこう」
「我等だけのですか」
「今は」
「他言は無用だ」
 そしてこうも話すのだった。
「このことはな。いいな」
「はい、それでは」
「そのように」
 二人はまたブワイフの言葉に頷くのだった。そのうえでまた話す。
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