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第九部第二章 虚の兵士達その十四
「はい」
「それでは言い方を変えよう。この移動要塞の主砲で一人残らず吹き飛ばせ、よいな」
「そういうことでしたら」
 それに関しては彼も賛成であった。喜んでそれに応えた。
「主砲、発射用意」
「了解」
 艦長が言う。ジナールはそれを受けて指示を下す。
「主砲、発射用意」
「目標は前方の敵主力部隊、よいな」
「はい」
 サチフの言葉に従う。そして主砲がそれに従い向けられる。艦長の指示がまた下った。
「主砲発射」
「主砲発射」
 ジナールは言葉を繰り返す。そして主砲にエネルギーが充填される。
「後は貴官に任せる」
 サチフはここでジナールに対してそう言った。
「了解しました」
 ジナールは頷いた。やや事務的な受け答えであった。
「撃て!」
 彼がボタンを押した。それにより二条の光が放たれた。それが敵を撃った。
「やったか!」
 皆光が直撃した方に目をやった。そこにはまるで原子雲の様な爆発が起こっていた。そしてそれが消えるとそこには何もなかった。
「よし!」
「やったぞ!」
 皆それを見て喜びの声をあげた。ジナールはその中で会心の笑みを浮かべていた。
「凄い威力だな」
「はい」
 サチフにそう答えた。彼も同じ考えであった。
「だがこれで終わりではない。この星はまだ連中のものだ」
「それはわかっております」
 ジナールはその言葉に頷いた。
「それでは進撃ですね、引き続き」
「うむ」
 艦長の言葉に頷く。それはもう最初から決まっていることであった。
「それでは全軍進撃」
「ハッ」
「目の前に立ちはだかる敵は全て踏み潰せ。よいな」
「司令、ですからそれは」
「おお、そうだったな」
 彼はそれを受けて笑った。その大きな口を開けて笑った。
「それでは蹴散らせ。よいな」
「了解」
 それは可能であった。彼の指示に従い戦車、そして装甲車が一斉に攻撃をはじめ動きだした。


「撃て!そして我等の勝利をもたらすのだ!」
 それはサチフだけの言葉ではなかった。サハラ義勇軍全体の言葉であった。そして彼等は突き進んだ。目の前にいるエウロパ軍を文字通り蹴散らしながら。
 エウロパ軍はそのサハラ義勇軍の猛攻を耐えながら撤退を進めていた。そして港に少しずつ逃れてきていた。
「動きが遅いな」 
 フランドは港に入って来る部隊を見ながらそう呟いた。何日にも渡る戦闘でその顔は憔悴しきったものとなっていた。戦闘がはじまってから殆ど休息をとっていないのである。
「仕方ありません、負傷者はダメージを受けた兵器が多いのですから」
 隣にいるゴンガーザがそう答えた。彼もここで移ってきていたのだ。
「それだけ激しい戦闘を行っているということです」
「それはわかっているが」
 それはフランド自身が最もよくわかっていることであった。彼もこの港に迫り来る敵を退けるので何度も激闘を繰り広げてきているのだ。
「それでもな。この動きの遅さは致命的になりかねない」
「焦っておられますか」
 ゴンガーザはそれを聞いて彼に問うた。
「それは禁物ですぞ」
「わかっている」
 フランドも馬鹿ではない。焦りが戦闘においてどれだけ危険なものかはよくわかっていた。だが焦りが心の中にあるのも事実であった。それもよくわかっていた。
「わかってはいるがな」
「ならば御気をつけ下さい。お気持ちはわかりますが」
「うむ」
 彼は頷いた。
「ここは抑えて。宜しいですね」
「そうだな。私が焦ってはどうにもならない」
「そうです」
 ゴンガーザはここでは彼の焦りを取り除くことに力を注ぐことにした。だが今の戦局が彼等にとって深刻なものであることには全く変わりがなかった。いや、それは刻一刻と悪化していた。それは痛い程よくわかっていた。だがそれをどうすることもできないのも事実であった。
「このまま撤退させていくしかないが」
 フランドはここで呟いた。
「はい」
「だがそれはあまりにも困難だな。敵の攻撃がここまで激しいと」
「ですがやらなければなりません。これからのことを考えますと」
「うむ」
 彼はそれに頷いた。
「ファブリチーニ司令は今どうしておられる」
「司令部で指揮を執っておられます。そしてダメージの多い部隊から撤退させておられます」
「そうか。だが司令部も安全なのか」
「難しいですね。あのエリアの損害も馬鹿にならないものになっておりますし」
「だろうな。制空権もない。当然のことだ」
「はい。ですが司令はまだ留まっておられます。そして指揮を執っておられます」
「流石と言いたいが無理は禁物だな」
「禁物ですか」
「そうだ。頃合いを見てして司令部も撤退されるように申し上げてくれ。よいな」
「わかりました」
 彼はそれに頷いた。そしてフランドの側を離れた。
「行くのか」
「はい。元々こちらには伝令で来ましたし」
「そうか。ならば行ってくれ。ただし気をつけてな」
「わかっておらります。それでは」
「うむ」
 こうしてゴンガーザは司令部に戻った。そこでは揺れながらも指揮を執るファブリチーニが待っていた。
「む、早かったな」
 彼はゴンガーザを出迎えてそう言った。やはり彼の顔にも疲れが見えていた。だがそれについてはおくびも出すまいとしていた。それは態度でわかった。だがゴンガーザはそれについては何も言わなかった。
「港はどうなっていた」
「今のところは無事です」
「そうか、それは何よりだ」
 ファブリチーニはそれを聞いてとりあえずは安心した。
「だが今のところは、だな」
「はい」
 残念ながらそれに頷くしかなかった。
「そして部隊の動きも今一つだな」
「そうですね。やはりダメージの影響で思うようにはいっておりません」
「仕方ないな。だがそうも言ってはおられない」
「はい」
「撤退を急がせよ。ただ負傷者を優先させてな」
「わかりました」
 ゴンガーザだけでなく司令部にいた者がそれを受けて敬礼した。
「それではそう指示を出しましょう」
「うむ、頼むぞ」
 ファブリチーニはそれを受けて頷いた。
「そしてだ」
「はい」
 彼の指示は続いた。
「ここを引き払うのも考慮に入れた方がいい頃になってきたな」
「そうですね」
 それはゴンガーザが港でフランドに言われたことと同じであった。
「そろそろ頃合いだと思います」
「うむ。前線の将兵の状況次第だがな」
「はい」
「撤退の準備を進めておけ」
「了解」
 それを受けて司令部も撤退の準備をはじめた。だがそこにまた震動が来た。
「どうやら急いだ方がよさそうだな」
「はい」
 彼等は粛々と準備をはじめた。そこにまた震動が来る。彼等はその中動いていた。
「惑星での戦いはどうか」
 マシュハドは旗艦の艦橋においてワフラに問うた。既に宇宙での戦いは趨勢が決していた。連合軍の有利は最早動かぬものとなっていた。
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