第三十四部第二章 風の変化その一
風の変化
アヤグーズがアッサルームでの宇宙戦に敗北しそのうえ首都惑星に入られたということは当然ながらサハラ全土にも伝わった。それは連合よりも早かった。
「そうか。敗れたか」
言うまでもなくアッディーンもその話を聞いたその場所はガワール星系であった。彼はそこでこれからの進撃用意及び要塞の補給基地化を進めていた。
彼は今要塞の司令室にいた。そこの木製の執務椅子に座りそこから報告を聞いていた。
彼は報告を聞いたうえで言う。それは。
「予想外だったな」
「はい、確かに」
報告したラシークも彼の言葉に頷く。
「まさか敗れるとは」
「アヤグーズの滅亡は決定した」
アッディーンは続いてこう述べた。
「これでな」
「はい。そしてハサンの西部戦線での劣勢も決定的になりました」
ラシークはこうも述べた。
「この度の敗戦により」
「これを覆すのは容易ではない」
アッディーンはこうも述べた。
「確かに兵力では今だに圧倒しているがな」
「アヤグーズはハサン西方における交通の要衝でもありました」
だからこそティムール軍はあえてアヤグーズに攻め込んだのだ。猛将である彼女の巣にあえてだ。それはこの交通の要衝を押さえる為だったのだ。
「ですがそこも奪われました」
「そうです」
そこにはシャルジャーもいた。彼もまたアッディーンに対して述べる。
「おそらくティムール軍はここからハサンの勢力圏各地に兵を送るでしょう」
「攻撃側の利点は攻撃ポイントを選択できることですが」
作戦参謀であるシンダントもこの部屋にいた。
「ティムール軍はそれをかなり自由な域で手に入れました」
「これまでは限定されたものでしたが」
「さて、ハサン軍はどうするか」
アッディーンは考える目になりそのうえでまた述べた。
「攻撃ポイントは敵に自在に与えてしまった」
「はい」
「ティムールは守らなくてはならない」
彼はさらに言う。
「しかし兵力には限りがある。全てを守ることはできない」
「全てを守ろうとする者は何も守れず」
シンダントはこの言葉を出した。プロイセン王でありオーストリア継承戦争及び七年戦争において勝ち抜いたフリードリヒ大王の言葉である。
「ですから」
「太子がどう判断するかだ」
アッディーンの目はさらに考えるものになっていた。
「守るポイントは何処かだな」
「そこに兵力を集めて守るしかありませんね」
「ハサン側は」
「我々の戦線とは違う」
アッディーンは次は自分達について言及した。
「我々のように一つのポイントしか攻められないものではな」
「ありませんね」
「やはりそれは大きいです」
「とにかく。アヤグーズはティムールの手に落ちた」
このこともまた言う。
「完全にな。そして」
「そして?」
「あの女王だが」
彼もまたブルコルジを知っていた。アヤグーズ女王としてその武勇を知られた彼女のことはサハラ中に知られている。それは彼もまた同じであった。
「果たしてどうなるか」
「降伏するのでは?」
「それしかありません」
「そうだな」
アッディーンもとりあえずは彼等の言葉に頷いた。
「これ以上の戦闘は無意味だ」
「はい、そうです」
「ですから」
「しかしだ」
そのうえで真剣な顔で言葉を変えてきた。
「あの女王は誇り高い性格だ」
「はい、そうです」
「まさしく虎です」
彼女のこの気性も誰もが知っていた。誇り高き虎の女王として知られていた。だからこそ彼等もまた幸福という今自分達が述べた言葉にすぐにこうも言うのだった。
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