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第三十四部第一章 他勢力の目その六
「アヤグーズ王家と縁者でね」
「ではその家が」
「ええ。助命を嘆願しているわ」
 そういうことであった。血縁はこの時代でも健在である。
「是非。連合に亡命させて欲しいと」
「それを主張しているのはマレーシアだけですか?」
「勿論マレーシアだけではないわ」
 話はそれに留まらないのだった。
「マレーシアを中心としてイスラム系の王制国家は全てね」
「そうですか。そういった国々も」
「そしてマレーシアと縁の深い旧太平洋諸国もよ」
 連合の中でも中心となっている国家である。
「彼等も是非にと言っているわ」
「では中央政府としては」
「彼等の声を受けてね」
「左様ですか」
「ええ。アヤグーズ王家に連合への亡命を提案するわ」
 そういうことであった。
「すぐにでも」
「ではそのように御願いします」
「そしてブルコルジ女王は」
「はい、義勇軍に招きます」
 また話が戻った。
「階級は元帥です」
「元帥ね」
「マシュハド元帥と話を調整したうえで軍を率いてもらいます」
 このことまで決めているのであった。
「是非共」
「そう。義勇軍元帥ね」
「そうです。如何でしょうか」
「いいと思うわ」
 カバリエも八条の今の言葉に賛成してみせた。
「それでね。軍事は私の専門じゃないけれど」
「そうですか」
「また言うけれど人材は幾らでも必要なのよ」
「その通りです」
「軍事もまたね」
 このこともわかっているカバリエだった。
「そういうことね」
「はい。ですが」
 八条はここまで話したうえで己の顔を曇らせるのだった。
「こちらはいいのですが」
「問題はあちらね」
「人材は一方が求めるだけでは上手くはいきません」
 こう言うのだった。
「双方が納得しないとなりません」
「相思相愛ということね」
「相思相愛?」
 こう言われても恋愛に疎い八条にはわかりにくいことであった。彼はそうしたことに関しては極めて鈍感なのだ。それは気付いている者は気づいている。
「そうなのですか?」
「ああ、そうね」
 カバリエモふとこのことを思い出した。
「言葉を変えるとね」
「はい」
「お互いが納得しないと駄目ってことね」
「その通りです」
 これで話は通じた。とかく恋愛には弱い八条だった。
「それは」
「そうね。つまりこの場合はあの女王がどう考えているかだけれど」
「誇り高い方なのは知っています」
 ブルコルジの気質は当然ながら彼等もよくわかっていた。知らない筈のないことであった。そしてこのことが極めて問題になるのだった。
「そして命を惜しむ方ではないということも」
「サハラでは元々命は大事にされないわね」
「戦場においてはそうですね」
「ジハードの概念によってね」
「それです」
 それだけジハードの概念はサハラにとっては重要なのだ。聖戦で死ぬことができればそれにより天国に行くことができる。だから戦場での死を恐れないのだ。
「ですから。女王もまた」
「あの女王は戦場では常に前線に立っているわね」
「ですね」
 このことからも猛将と呼ばれているのである。
「そのことからもやはり」
「命を惜しむような人物ではないわね」
「命よりも誇りですね」
「そうね。女王としての誇りを何よりも大事にするタイプの人間ね」
「かつての武士や騎士のように」
「武士ね」
 武士という言葉を聞いてカバリエは微笑んだ。
「武士というならそちらの国になるわね」
「そうですね」
 八条もカバリエのその言葉に頷いた。
「それは確かに」
「ではあの女王の今の心境もある程度はわかると思うけれど」
「そう言われますと」
 八条の顔がまた動いた。
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