第九部第二章 虚の兵士達その十一
多くの艦が直撃を受けた。そして炎と化して銀河の中に消える。ジェラールの乗艦であるポンペイウスも攻撃を受けていた。艦が大きく揺れた。
「うわっ!」
「うろたえる必要はない」
ジェラールは動揺する周りの者に対してそう言った。
「この程度でこの艦は沈みはしない。安心しろ」
「わかりました」
皆それを受けて落ち着きを取り戻す。そして冷静さを取り戻した。
「救護班と応急班を損傷箇所に向かわせよ」
艦長であるダミヤーノが指示を下す。それに従い救護班と応急班がすぐに動いた。
「これでとりあえずは安心かと」
「済まないな、艦長」
ジェラールはそれを聞きダミヤーノに対して礼を述べた。
「卿にも何かと苦労をかける」
「いえ」
だが彼はその言葉には首を横に振った。
「戦争ですから。当然のことです」
「そうか」
「それよりも司令」
彼はここでモニターを指差した。
「敵はまだ来ますぞ。ご注意下さい」
「そうだな」
見れば砲艦とミサイル艦は攻撃を終え後ろに下がっていた。今度は戦艦と巡洋艦が出て来ていた。
「いよいよ本格的に戦いを仕掛けるつもりか」
「まるでこれまでがほんの剣合わせに過ぎなかったような御言葉ですね」
シリアーニがそれを聞いて答えた。
「そうだ、これからのことを思えばな」
ジェラールはそう答えながらも笑っていた。
「それはこのニーベルングの戦いだけのことではないぞ」
「これからもですか」
「そうだ」
彼はそれに応えた。
「まだ序の口だぞ」
「少なくとも数においては」
「数だけではない。数だけではな」
「といいますと」
「いずれわかるさ」
そう言うと顔を前に戻した。
「全軍迎撃用意」
「了解」
シリアーニはそれ以上問わなかった。そのまま顔をジェラールと同じく正面に戻していた。
「奴等を何としても惑星には近付けるな」
「ハッ」
連合軍の戦艦の主砲が火を噴いた。その後ろから砲艦とミサイル艦の援護射撃も来た。そして駆逐艦や巡洋艦も攻撃に参加する。そして高速戦艦が側面に回ってきた。
「これが奴等の攻撃のやり方か」
「そのようですね」
しかしそれでも逃げるつもりはなかった。彼等は黒い艦隊を前にしてもそれでも怯んではいなかったのだ。
砲撃が艦隊に撃ちつけられた。それでエウロパ軍にはかなりの数の損害が出た。それでも彼等は背を向けようとはしない。
「側方に来る敵を防げ!」
ジェラールがまた指示を下した。それに従い艦隊の一部が彼等に向かう。
「まだ来るぞ、油断するな!」
ジェラールはまた指示を下した。それに従いエウロパ軍は迎撃態勢にまた入った。
今度は巡洋艦と駆逐艦が接近してきた。その先頭には戦艦がいる。
「火力を集中させよ!」
「ハッ!」
指示に従う。まずは戦艦を集中的に狙った。だがビームもミサイルもあまり効果がなかった。
「クッ、何という防御力だ!」
「落ち着け、沈まない艦はない。集中して攻めよ!」
その防御力に怯む部下達を叱咤して戦場に留まらせる。そして戦線を維持させた。だがそれも怪物が姿を現わすまでであった。
「旗艦を突入させよ!」
マシュハドの指示が下る。それに従いティアマト級巨大戦艦が敵の中に踊り込んだ。そしてその主砲を放つ。それは一直線に敵陣を切り裂き無数の光を作り出した。
「またあの怪物か!」
「司令、どうしますか!」
「ううむ」
陣の中に踊り込み暴れはじめた巨艦を前にジェラールは唸った。だがそれでも彼は冷静さを失ってはいなかった。
「まずはあの巨艦を沈めよ。よいな」
「了解」
「あの巨艦はそれぞれの艦隊の旗艦だ。それぞ沈めれば艦隊の統制も効かなくなる。よいな」
「はい」
それに従い今度はティアマト級に攻撃が集中される。だがそれはまるで効果がなかった。
厚いバリアーと装甲の前に阻まれてしまうのだ。そして逆にティアマト級の攻撃でエウロパ軍は次々に倒されていく。圧倒的な力の差であった。
彼等を先頭にして陣を切り裂いていく。だがそれを防ぐ手立てはなかった。
「このままではまずいな」
「ですね」
それは彼等もわかっていた。だがどうすることもできなかった。彼等が目の前の敵を相手にしている間に連合軍は兵を二つに分けようとしていた。
「まさか」
それを見たジェラールもファブリチーニも彼等が何を考えているのかすぐに察した。
「いかん、奴等を止めよ!」
すぐに双方から指示が下る。だがそれは遅かった。連合軍の別働隊が惑星に集中攻撃を仕掛けてきたのだ。まずはティアマト級の巨砲が火を噴く。
「グワッ!」
既に無人艦隊の攻撃によりかなりのダメージを受けていた惑星にそれを防ぐことはできなかった。それにより穴が開いた。連合軍はそこに入らんとしていた。
「艦隊を戻せ!」
ジェラールの指示が下る。だがそれは適わなかった。
「敵の艦載機が来ました!」
連合軍の空母、そして他の艦艇から艦載機が発進する。彼等は編隊を組んでエウロパ軍の艦艇に襲い掛かってきた。エウロパ軍も艦載機を出してきた。しかし数があまりにも違い過ぎた。
「来たな」
黒いタイガーキャットに乗る一人の青年がエインヘリャルを見て笑った。浅黒い肌に黒い切れ長の目をした青年であった。彼の名をシマル=ザーヒダンという。やはりかってエウロパ軍と戦い、そして敗れたことのあるサハラの軍人の一人である。彼は今エインヘリャルを見て笑っていた。
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