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第三十三部第五章 地上での決戦その三十
「アヤグーズとの戦いはな」
「あの女王も膝を屈するのですね」
「遂に」
「屈させてみせる」
 シャイターンは遠く、その王宮の方を見つつ言うのだった。
「何があろうともな」
「要塞は堅固なようです」
「どうやら。それは」
「三日だ」
 シャイターンが今度言ったのは期日だった。
「その要塞を三日で陥落させる」
「三日でですか」
「そうだ。そして」
 その遠くを見据えたまま言葉を続ける。
「三日で私は虎を得る」
「虎を。つまり」
「それは」
「そうだ。彼女だ」
 その彼女であった。彼が心から望んでいる彼女だった。
「虎を我が部下とするのだ。いよいよな」
「そういうことですね」
「要塞に立て篭もる虎を」
「虎は高貴な存在だ」
 サハラにおいては獅子の方が上だとされるがそれでも虎が高貴な存在とされているのは同じである。その気高いまでの美しさからそうされているのだ。
「そうおいそれとは手に入るものではない。そもそもな」
「苦労が必要ということですね」
「まだ苦労が」
「しかもその虎がだ」
 シャイターンはなおもブルコルジについて語る。
「虎の中の虎。虎王だとすればだ」
「その苦労も尋常なものではない」
「そういうことですね」
「その通りだ。それではだ」
「はい」
「翌朝だ」 
 また時間を述べた。
「翌朝進撃する。それまで休息だ」
「了解しました」
「戦場整理にあたっている部隊はそのまま続けるように」
 夜でもであった。見ればシャイターン達の周りでは多くの光が見える。それに従って戦死者や破壊された兵器の収容に当たっているのは明らかであった。
「いいな」
「はい、それもまた」
「了解しました」
 この命令も受けて敬礼が為された。シャイターンの言葉はさらに続く。
「そして食事だが」
「食事ですか」
「まだ皆採っていませんが」
「すぐに採るようにな」
 あまり多くは言わなかった。
「すぐにだ。いいな」
「すぐにですか」
「もう遅い」
 彼は辺りを見ていた。その真っ暗闇を。
「すぐに採らなくてはな。時間が時間だ」
「だからですか」
「そうだ。すぐに採るようにな」
「それでしたら野戦食になりますが」
「それで宜しいですね」
「私もそれを採ろう」
 シャイターンはこうも言うのだった。
「私もな」
「主席もですか!?」
「まことですか!?」
「何かおかしなことはあるか?」
 シャイターンはここで驚きを隠せない周りの者達に対して問い返した。
「それで。何かあるのか?」
「いえ、いつものようなメニューかと思いまして」
「違うのですか」
「あくまで時と場合が許せばだ」
 シャイターンは落ち着き払った様子で彼等に言葉を返した。それはまるで今から最高級のレストランに向かうかのような、そうした物腰だった。
「だがそうでなければ」
「採られないのですか」
「そうだ。今は時間も余裕もない」
 だからだというのだった。
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