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第九部第二章 虚の兵士達その九
「乗艦が撃沈された折左手が吹き飛んでしまった」
「機械の腕となってしまったのですね」
「まあそういうことだ。あの若者との戦いだったな」
「モンサルヴァート提督ですね」
「あの時あの若者は中将だった。わしは大将だった」
「そうだったのですか」
「今では両方共元帥になった。わしは客員だがな」
 連合とエウロパでは元帥というものの存在が異なる。連合においては軍人の最高階級である。エウロパ元帥というさらに上の階級があるにしろエウロパもそれは同じであるがそれと共に権限が大きく異なっているのだ。
 エウロパでは元帥府も開くことができる。そこで幕僚を集めることができる。エウロパは貴族制国家である為そうしたことが可能であるのだ。
「客員といっても元帥は元帥ですよ」
 ワフラはここでそう言った。
「私も中将ですし」
「そうだったな」
 彼はそれに頷いた。
「これはそれ程気にすることはないか」
「はい」
「それにしてもあの時は酷くやられた」
「そうらしいですね」
「我々は正面からぶつかった。そして見事に負けた」
 そう語る彼の脳裏にその時の戦いのことが思い浮かぶ。
「勝敗は戦の常といえどもな。国はそれでなくなった」
「我々もでした」
「だが今その恨みを晴らす時が来た」
 マシュハドはここで意を決した声を口にした。
「全軍このまま突撃だ。そしてあの要塞群を一気に制圧する。よいな」
「ハッ!」
 サハラ義勇軍は一直線に進撃を開始してきた。だがここで無人の艦艇達が一斉に動いた。
「邪魔をするか!」
 ジェラールはその動きを見て激昂した。そしてすぐに攻撃の指示を下した。
「蹴散らせ!」
「ハッ!」
 それを受けてエウロパ軍の艦艇が総攻撃を開始した。それにより連合軍の無人艦艇達を次々と沈める。だがそれでもやはり彼等は動きを止めない。
 衛星に体当たりを敢行していく。それにより衛星のダメージはさらに大きくなってきた。
 惑星にも損害が増えてきた。沈められることを恐れない彼等にとって敵の攻撃は何程のものでもなかったからだ。これによりエウロパ軍のダメージはさらに大きなものとなった。
「まだだ、まだ終わったわけではない!」
 ファブリチーニはそう叫んで全軍を叱咤する。そして踏み止まり作戦指揮を続けた。
「敵を惑星に近付けるな!」
「了解!」
 またもや攻撃が加えられる。連合軍の艦艇はその前に炎となって消えていく。しかしそれでも攻撃をかいくぐり体当たりを続けていた。それにより要塞群のダメージは蓄積されていった。
「まずいな、このままでは」
 ジェラールもファブリチーニも苦渋に満ちた顔でそう呟いた。
「損害は今どの位だ」
「はい」
 ジェラールにシリアーニが答える。
「艦隊の損害は二割を越えました」
「遂にか」
「はい。要塞群のダメージはさらに深刻です。三割近くになり、第二衛星及び第三衛星が停止しました」
「そうか」
 彼はそれを沈んだ顔で聞いていた。
「そして艦隊司令にも戦死者が出ております。またグリルパルツァー提督が重傷を負われました」
「無事か」
「命には別状はない模様です。ですが作戦指揮は不可能とのことで後方に下がられました」
「そうか。大事がないようにな」
「はい」
「他には何かあるか」
「機雷源が消滅しました。そして」
「そして・・・・・・?」
「惑星の主砲が使用不能になったとのことです」
「何かあったのか!?」
 それを聞くと流石に平静ではいられなかった。惑星の主砲は要塞群の防衛の要であるからだ。
「主砲の攻撃は止めておりましたね」
「ああ」
 これは接近してくる敵の無人艦艇に対してのものであったからだ。戦術としてはごく当然のことであった。
「そこを衝かれました」
「どういうことだ」
「主砲の中に敵の艦艇が入り込みまして」
「うむ」
「そして爆発したのです。そしてそれにより主砲が使用不能となりました」
「それが奴等の狙いだったのか」
「おそらく。また残りの衛星のダメージも深刻になってきております」
「そして今連合軍の本軍が来ようとしている」
「はい」
「一体どうするかだな」
「ここは戦線をさらに縮小させるべきだと思いますが」
「縮小か」
「はい」
 シリアーニは頷いた。
「惑星にのみ戦力を集中させるべきだと思いますが」
「惑星にか」
「既に衛星はどれもダメージが深刻です。機能を失うのも時間の問題かと。如何されますか」
「・・・・・・・・・」
 ジェラールはそれを聞いて考え込んだ。元帥とはいえ彼の一存ではそこまでは決められない。だがシリアーニの言葉に理があるのもわかっていることであった。
「わかった。暫く待ってくれ」
「はい」
 彼はここで艦の司令室に戻った。そしてファブリチーニに通信を入れた。
「何かあったのか」
「うむ」
 通信に出て来た僚友に声を向けた。
「今こちらの艦隊の参謀が提案してきたことだが」
「戦線の縮小だな」
 彼は言われる前にそう答えた。
「わかっていたか」
「戦局を考えるとな」
「そうか」
「卿もそれを考えはじめていたのではないかな」
「いや」
 しかし彼はその言葉には首を横に振った。
「戦局が劣勢になってきていることはわかっていたがな」
「そうか」
「だが戦線の縮小は理に適っているな」
「そうだな。ではそれで決まりだな」
「うむ。衛星に残っている戦力を引き揚げるのだな。援護はこちらでする」
「頼む」
 ファブリチーニは友にそう頼んだ。
「そちらも何かと大変だろうがな」
「何、それが仕事だ」
 ジェラールは疲れた顔に笑みを浮かべてそう答えた。
「それに大変なのはそちらもだろう」
 声だけでもファブリチーニがかなり疲れていることがわかっていた。だからこそそう声をかけたのであった。
「それはお互い様だ」
「済まないな」
 こうしてエウロパ軍は戦線を縮小させた。そして惑星に戦力を集中させてきたのだ。
「ほう」
 それを見てマシュハドは微かに笑った。
「戦力を一つにしてきたようだな」
「そのようですな」
 ワフラもそれに頷いた。
「それだけ追い詰められているということです」
「うむ」
 マシュハドもそう見ていた。そのうえで彼に同意した。
「それでは動くとするか」
「はい」
 ワフラはまた頷いた。
「それでは行きましょう」
「そうだな。だがその前に」
「わかっております」
 ワフラはそれに答え笑った。
「彼等に最後の働きをしてもらいましょう」
「そういうことだ」
 それを受けて無人の艦艇が一斉に動いた。そして惑星に急行する。
「フン、そうきたか」
 戦力の集中を終えたエウロパ軍はそれを見て不敵にそう呟いた。
「ならばそれを倒すまでだ、最初にな」
「ああ」
 彼等はそれぞれの配置に着いた。そして照準を定めた。
「撃て!」
「おう!」
 一斉に無人艦隊に攻撃を仕掛ける。それにより連合軍の艦艇がさらにダメージを受ける。だがそれでも突撃してくるのは変わらなかった。
「中に人がいないとなりゃ遠慮はしねえ!」
「後腐れがないってもんよ!」
 エインヘリャルも出撃していた。そして艦艇を次々と沈めていく。無人である為か反撃も単調であった。元々のAIの性能もよくないようであった。

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