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第九部第二章 虚の兵士達その七
 連合軍の無人艦艇は体当たりを続けていた。十二の衛星全てがダメージを受け惑星にもダメージが及んでいた。だがそれでもエウロパ軍は戦闘を続けていた。
「グッ!」
 司令部がある惑星に連合軍の艦艇が百隻単位で体当たりを敢行してきた。司令部の側であった。それを受けて司令部が揺れた。
「うろたえるな!」
 ファブリチーニはその中踏み止まって周りにいる将兵達を叱咤していた。彼もバランスを崩そうとしていたがそれでも踏み止まったのだ。そして指示を出した。
「主砲の射撃を止めよ!」
「ハッ!」
「そして攻撃要員はビーム砲座及びミサイルに集中せよ。迫り来る敵艦隊を防げ!」
「了解!」
 接近してくる敵艦艇を撃破する戦術に切り替えた。そして次々に敵を沈めていく。それでも体当たりを敢行する艦艇はあったが大幅に減っていた。何とか凌げるかと思われた。だがそれはほんの僅かな間そう思われただけであった。
「第一衛星が戦闘不能に陥りました!」
「何っ!」
 見れば第一衛星が沈黙していた。とりわけ攻撃が激しく完全に戦闘能力を失ってしまっていたのであった。
 第二衛星も危険な状態であった。他の衛星も少なからずダメージを受けている。惑星への攻撃は衛星への攻撃への目を逸らす為のカモフラージュでもあったのだ。
「第一衛星のエリアには艦隊を向けよ」
 しかしそれでもファブリチーニは冷静に指示を出した。そして第一衛星の分の防衛を艦隊で埋めることにしたのであった。
「了解しました」
 それを受けてジェラール率いる艦隊が第一衛星のエリアに向かう。何とかそのエリアの防衛を維持した。しかしその分遊撃戦力がなくなってしまった。結果としてそれが全体の防衛の弱体化に直結してしまった。
 連合軍の攻撃はさらに激しくなってきていた。残る十一の衛星への体当たりもさらに多くなってきた。遂に第二衛星も沈黙してしまった。
「第二衛星を放棄」
 ファブリチーニはそう指示を出した。
「人員は第三衛星に入れ」
「ハッ」
 戦線がまた縮小された。残る十の衛星のダメージもさらに激しくなってきていた。機雷源は既に破壊され突破されている。要塞群は内部に深く入られようとしていた。
 そこに回廊から大軍が姿を現わした。連合軍の援軍であった。
「遂に来たか!」
 その先頭にはあの巨大戦艦が何隻もあった。見れば艦を漆黒に塗っていた。黒い艦隊であった。
「黒騎士か!?」
「どうやらそのつもりのようですな」
 シリアーニがジェラールにそう答えた。
「しかし連合軍にあのような独特のカラーリングの艦隊が存在していたか」
「正規軍ではありません」
「成程、正規軍ではか」
「はい」
 ジェラールにはその言葉の意味がよくわかっていた。
「やはり彼等が出て来たな」
「ですね」
 今姿を現わした漆黒の艦隊、それはサハラ義勇軍であったのだ。彼等は要塞群に向かって進んできた。その後ろからも黒い艦隊が続いていた。
「ふむ」
 その黒い艦隊の先頭にいるティアマト級巨大戦艦の艦橋に一人の老人がいた。連合軍の戦闘服を着ている。連合軍は戦闘中や作業中は戦闘服で活動する。将校は紫、下士官及び兵士は青い戦闘服となっている。階級は元帥のものであった。
 黒い肌に白い髭を顔中に生やしている。顔立ちからサハラ出身の者であるということがわかる。
「思ったより効果があるようだな」
「はい」
 隣にいる口髭の男が頷く。彼も同じく連合軍の戦闘服を着ていた。階級は中将である。
「あの要塞は難攻不落と呼ばれている」
 白い髭の男は言葉を続ける。
「だが今その名が終わる時が来ているのだ。我々の手によってな」
「我がサハラ義勇軍の手によってであります」
 口髭の男はそれに頷いた。
「そうだ。それでは我々がとるべき作戦はわかっているな」
「はい」
「全軍突撃、そして一気に陥落させる。それだけだ」
「ハッ」
 中将はその言葉に敬礼した。
「それでは閣下、お下がり下さい」
「下がるだと」
「はい。軍の先頭にいては指揮も執りづらいでしょうから」
「わしはそうは思わん」
 しかし彼はそれを断った。
「サハラにおいてもわしは常にこうして戦っておったぞ」
「はあ」
「ジャービル=ワフラ中将」
 そして今度は彼の官職氏名を呼んだ。
「はい」
「貴官はどの国にいたのか」
「マラケシですが」
「そうか」
 彼はそれを聞いてまずは頷いた。それから言った。
「貴官の国の軍人達は皆勇敢だったと聞いているが」
「はい、その通りです」
 それにすぐに答えた。
「我等にとって臆病、弱気とは最大の侮辱でありました」
「それはわしの国でもそうだった」
 白い髭の男は静かにそう言葉を返した。
「アッバース共和国でもな」
「それはよく存じているつもりです」
 アッバースもマラケシもかってはサハラ北方にあった国である。だがエウロパにより滅ぼされてしまったのだ。彼等もまた難民出身であったのだ。
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