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第三十三部第三章 機雷戦その三十四
「数は。少ないな」
「ティムール軍との戦闘でかなりの損害を出してしまっています」
「そうだな。やはりな」
「全軍の二割強は減らされています」
「対するティムール軍は」
「然程」
 これが勝敗の何よりの証であった。
「減ってはおりません」
「そうか。やはりな」
「そしてハサン軍もまた」
「どちらが先に来る?」
「アヤグーズ軍も速いのですが」
 ここに答えが半分出ていた。
「それ以上に」
「ならば余計にだ。撃つぞ」
「了解です」
「一斉射撃だ」
 またこの指示が出された。
「いいな」
「了解です」
 こうして遂に一斉射撃が放たれた。彼等は機雷を潰していく。しかしそこでやはりハサン軍の艦艇の幾らかは友軍の砲撃を浴びる羽目になった。
「くっ、損害は!」
「中破です!」
 あの先に突撃を独断で進めようとしていた艦長に副長が答えた。
「何とか撃沈されずに済みましたが」
「それでもか」
「はい、被弾は免れませんでした」
「くっ・・・・・・」
「航行はできます」
 それは確認された。
「ですがビーム砲に損害を受け」
「攻撃に支障があるのだな」
「残念ながら」
「・・・・・・航行できるだけでもよしとするか」
 彼はそれを不幸中の幸いだと思わざるを得なかった。
「今はな」
「では艦長、すぐに」
「この場合はダメージコントロールだったな」
「そうです」
 この指示の確認にこそ危うさがあった。損傷を受けた場合のダメージコントロールが必須なのは言うまでもない。それを確認するところにこの艦長の軍人としての資質が出てしまっていた。
「ここは」
「よし、ではすぐに応急班を向かわせろ」
「わかりました」
「そのうえでだ」
「そのうえで?」
「一刻も早く逃げ出す用意をするのだ」
 もう彼はそのことを念頭に置いているのだった。
「今はな。いいな」
「わかりました」
「生きなければならない」
 彼は言った。
「何としてもな」
「そうですね。とにかく生きないと」
「わしには家族がいる」
「私もです」
 彼等は生きることだけを考えていた。
「ですから。何があっても」
「助かりましょう」
 これは今ここにいるハサン軍の将兵の多くが抱いている共通の感情だった。それはすぐにバンダル達にも伝わったのであった。
「またしても将兵の足並みが乱れております」
「機雷への一斉射撃でか」
「その通りです」
「覚悟はしていた」
 それを聞いてもバンダルは今は表情を崩さなかった。
「それはな」
「左様ですか」
「機雷は我等の間にも入っていた」
「はい」
 そこに訓練がおぼつかない軍で一斉射撃を加えれば味方にも攻撃の向こう側にいる攻撃が及び損害が出るのは言うまでもないことであった。そういうことだったのだ。
「覚悟のうえだ」
「そうですね。それは」
「それよりもだ」
 その足並みの乱れを受けたうえでの言葉であった。
「行くぞ」
「撤退ですか」
「それと共に合流だ」
 こうギーヴに告げたのだった。
「今はな。アヤグーズ軍と合流するぞ」
「アヤグーズ軍との合流ですか」
「こちらに来てくれている」
 自分達を救う為にだ。その気概と侠気を彼等受けていたのである。
「それならばな」
「それでは」
「全軍に告ぐ」
 またしてもここで指示を出した。
「全軍アヤグーズ軍と合流するぞ」
「はっ」
「そこで例えハサン軍との戦闘になろうともですか」
「それでもですか」
「そうだ。それもまた覚悟のうえで」
 強い決意に満ちた言葉だった。
「行くぞ。いいな」
「了解です」
「我等だけ助けてもらうわけにもいかない」
 バンダルは指示を出したうえでこう言うのだった。
「せめて。その心だけでも受けてだ」
 こう言いながら今アヤグーズ軍との合流に向かうのだった。彼等もまたその意地を見せようとしていたのであった。
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