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第九部第二章 虚の兵士達その五
「代わりにAIによる自動操縦が為されていました」
「そうか、やはりな」
 彼はそれを受けてそう呟いた。
「中に将兵は乗り込んでいなかったか。道理で動きが単調な筈だ」
「はい。他の連合軍の艦艇もそうでしょうか」
「おそらくな。試しに数隻調べてみる必要がある」
「わかりました」
 それを受けて連合軍の艦艇の調査がはじまった。そしてやはり結果は同じであった。連合軍の艦艇には人は全く乗っておらず、AIで操縦が為されていた。
「無人の旧式艦か」
「囮と考えて問題はありませんね」
「そうだな。だがそれは一体何の為にだ」
「おそらくは」
 ここであの青年将校が口を開いた。
「我等の消耗を狙っているのではないでしょうか」
「消耗をか」
「はい」
 彼はそれに頷いた。
「それから本軍が来るのではないでしょうか」
「ううむ」
 ジェラールはその言葉を受けて考え込んだ。
「ならば危険だな」
「はい」
「わかった、すぐに退くぞ。囮ならば相手をしてはならない」
「はい」
「全軍後退」
 ジェラールはすぐに全軍に指示を下した。
「以後我等は要塞群の防衛に徹する」
「了解!」
 それを受けてジェラールの軍は退きはじめた。そして要塞群右翼に展開する連合軍を叩くとそのまま要塞群に入った。その連合軍は後方からジェラールの軍が迫ると呆気なく道を開けた。
「やはりな」
「はい」
 ジェラールと青年将校はそれを横目で見ながら頷き合った。
「連中は我々と戦うようにはインプットされていない。あくまで要塞群への攻撃が目的だ」
「ですね」
「ところでだ」
「はい」
 ジェラールはここで問いを変えた。
「卿の官職氏名を聞きたいのだが。確か新着だったな、この前に」
「はい」
「一体何というのかな」
「マリオ=ディ=シリアーニです。階級は中将であります」
 彼は敬礼をしてそう答えた。
「シリアーニ」
「はい」
「まさかとは思うが卿は」
「はい。先の情報部長フィレンツォ=ディ=シリアーニは私の父です」
「そうだったのか、やはりな」
 ジェラールはそれを聞いて暗い顔になった。
「御父上は」
「わかっておりますよ」
 彼はそれだけ言っただけであった。
「父のことは残念でした」
「うむ」
「ですがそれでも父を尊敬しております。父は立派な武人でした」
「そうだな。私もかって卿の御父上と共に戦場にいた」
「そうだったのですか」
「素晴らしい軍人だった。卿もそれに負けない軍人となってくれ」
「はい」
 彼等はそう話をしながら要塞群に入った。そしてファブリチーニに連合軍のことについて話をした。ファブリチーニはフランドに防衛の指揮を任せジェラールとの話し合いに入った。
「それは本当か」
「ああ、これを見てくれ」
 そして部下に命じて作らせた資料を彼に手渡した。
「部下が作ったものだが」
「うむ」
「連合軍の艦艇には誰も乗ってはいない。動きもあらかじめインプットされている」
「そうだったのか、やはりな」
「思うところがあったようだな、卿も」
「うむ。道理で動きが単調な筈だ。しかも死を恐れないからな」
「それだな」
 ジェラールはその言葉を指摘した。
「それがまずおかしいと思った」
「そうか」
「連合軍は将兵の命を最優先させなければならない筈だ。だが彼等の用兵はそれを全く無視していた」
「ああ」
「それだけで変だと思っていた。こういう理由があったか」
「どうする、奴等は囮だ」
「それはわかっている」
「今は適当にあしらっていればいい。消耗は避けるべきだと思うが」
「そうだな」
 ファブリチーニはそれを受けて答えた。
「それでは卿の艦隊は要塞防衛に徹してくれ」
「うむ」
「要塞群はこれより専守に徹する。そして無駄な消耗は避けよう」
「そうだな。それがいい」
 こうして彼等は要塞群に入り込み専守に徹することにした。そして連合軍の単調な攻撃をしのいでいた。やはり連合軍の艦艇はどれも無人であり、動きもありきたりなものであった。エウロパ軍にとっては他愛もないものであった。
「楽な戦争ですね」
「今のところはな」
 ジェラールは部下にそう応えた。
「しかしこれからはわからん」
「と言いますと」
「見ろ」
 彼はここでモニターに映る要塞群の出入り口を指差した。そこには新たな敵が姿を現わした。
「また来たのですか」
「そうだ」
 ウンザリとした顔の部下に対して言う。
「おそらくまた無人艦隊だろうがな」
「そうでしょうね」
「機雷源はもう殆ど破壊されてしまっている。そして戦線は要塞群に縮小されている」
「はい」
「おそらく彼等は数でこの要塞群を消耗させるつもりだ。数でな」
「しかしそれは予想通りなのでは」
「中に人間がいた場合ではな」
「人間が」
「そうだ。今彼等は傷ついてはいない。だが我々はどうだ」
「・・・・・・司令と同じ考えです」
 彼はその言葉に対してそう答えた。
「今の損害は艦隊にして十パーセントに達しようとしている。要塞群のダメージも無視できなくなってきた」
「はい」
「それに対して敵は一兵も損なってはいない。この差は大きいぞ」
「ですね」
「だがそれに対して我々はあくまで受け身だ。敵であるのに変わりはないからな」
「それにこれは連合軍にとってもう一つの理由があると思います」
 シリアーニがここで言った。
「それは何だ」
「不要となった艦艇の処理です。おそらく連合軍には相当数の不要な艦艇があったのでしょう」
「だろうな」
 今要塞群に来ているのは全てかって各国の軍に分かれていた頃の艦艇であった。その為艦種はまちまちであった。奇妙といえば奇妙な艦隊であった。
「スクラップにされたものもあったでしょう。ですが何らかの事情でそれが不可能な艦艇も多々あったと思います」
「うむ」
「それの廃棄の意味もあるのでしょう、これは」
「だとしたら考えたものだな、本当に」
「はい」
「我々は廃棄の手伝いまでさせられているのだからな」
「そういうことになりますな」
「連合軍も案外策士がいるようだな」
「そうですね」
「その策に嵌ってしまったな。どうするべきか」
「今となっては戦うしかないですね、このまま」
「消耗を防ぐしかないか」
「そのようです」
「わかった。ならば我々はより防御に徹しよう」
「それしかないでしょうな」
「そして耐えるのだ。機が来るのを待とう」
「はい」
 結局彼等は守りを固めるだけであった。そして戦いを続けていた。やはり戦局はそのままであった。連合軍の無人艦隊はさらに数を増やしニーベルング要塞群に攻撃を仕掛ける。そして彼等を包囲していた。そして戦闘開始後二日が過ぎた。
 連合軍は艦艇をまた送って来た。その数は二百個艦隊に達していた。
「主砲、発射!」
「ハッ!」
 ファブリチーニの指示が下る。そして連合軍の艦艇を炎の変える。だがそれでも連合軍は要塞群に肉薄してきた。
「撃て!」
「了解!」
 それをジェラールの艦隊が防ぐ。一斉射撃でその敵艦隊を退ける。そしてさらに接近しエインヘリャルを出す連合軍も旧式の艦載機を出してきた。
「そんな旧式機で!」
「しかも人が乗っていないで来るか!」
 旧式なうえ動きも単調であった。エウロパのパイロット達の敵ではなかった。連合軍の艦載機は為す術もなく倒され、そして艦艇も攻撃を受けた。
 一隻、また一隻を沈められていく。そして連合軍の艦隊はその数を大きく減らしている。だがそれでも彼等は前に進んできた。だがそれを見てももうエウロパ軍は驚いてはいなかった。冷静に対処していた。
「所詮は機械か」
「そうですな」
 そう言葉を交わすだけであった。そして攻撃を続ける。こうして三日目の戦いも進んでいた。連合軍の損害は参加戦力の七割に達していた。だがエウロパ軍の損害もかなりのものであった。一割を遂に越え、そして将兵にも疲れが見えだしていたのだ。
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