第九部第二章 虚の兵士達その四
「これで左翼は安全だな。敵の動きも止まる」
「はい」
主砲の威力を見せたうえでそう言った。これで動きを止める狙いもあったのだ。
しかしそれでも動きは止まらなかった。連合軍はまだ進撃を続けていた。
「なっ」
「どういうことだ!」
ファブリチーニもゴンガーザもそれを見て思わず叫んだ。まさかまだ進んでくるとは夢にも思わなかったのだ。
「司令、如何なさいますか!?」
「決まっている」
だがそれでもファブリチーニはまだ冷静さを失ってはいなかった。指示をさらに下す。
「攻撃を続けよ!」
「ハッ!」
それに従い攻撃が続けられる。そして無数のビームやミサイルが連合軍を撃つ。そして次々と薙ぎ倒していく。だがそれでも連合軍は止まらなかった。
「どういうことだ」
「連合軍は兵士の命を粗末にできない筈ではなかったのか」
連合軍が志願制であり志願者の確保の為に苦心していることは彼等も知っていた。だからこそ今の彼等の進軍が異様に見えたのだ。そしてそこにまた報告が入った。
「回廊にまた敵軍が現われました!」
「またか!」
モニターを見ればまた敵が現われていた。それはそのまま機雷源に向かっていく。
「今度はどういうつもりだ」
「まさかそのまま機雷源に突っ込むつもりでは」
「それは有り得ない」
ファブリチーニは幕僚の言葉を即座に否定した。
「我が軍ですら出来ないことだ」
「常識で考えるとそうですが」
「常識外の行動をとるとどうなるか、だな」
「はい」
「まさかとは思いますが」
「ううむ」
連合軍のその艦隊はそのまま機雷源に突っ込んでいった。そして砲撃を開始した。
「機雷源に砲撃!?」
「奴等、何を考えているのだ」
だがそれにより機雷源は次々に破壊されていった。そしてそれにより大きな穴が開いた。その後ろにまた連合軍が姿を現わした。そして彼等も機雷源を攻撃する。
「何故機雷が砲撃で破壊されるのだ!?」
「まさかとは思いますが」
ゴンガーザがそれを見ながらファブリチーニに答える。
「あれは普通のビーム砲ではないのでは」
「どういうことだ」
「機雷のスイッチを触発するものだと思われます」
「機雷の」
「はい。機雷処理に使われる粒子砲だと思われます」
「あれか」
「どうやら」
ファブリチーニも掃海艇のこともよく知っていた。かっては掃海艦隊の司令も務めていたことがある。だからこそゴンガーザの話はよく理解できた。
「まさかそれを主力艦の主砲に置くとは思いませんでしたが」
「この時の為に改造したのかもな」
「そのようです」
彼はそう答えた。
「そしてそれだけではないようです」
彼は戦局を見ながらそう答えた。
「というと」
「あれを御覧下さい」
見れば回廊付近にまた艦隊が現われていた。しかしそれは戦艦や空母ではなかった。掃海艇であった。
それはすぐに機雷源に来た。そして機雷を次々と処理していく。先程機雷源に攻撃をしていた艦隊も同じく機雷を破壊していた。こうして機雷源は次々と破壊されていた。
「まずいな」
ファブリチーニはそれを見てそう呟いた。
「すぐに艦隊を向けよ!」
「ハッ!」
それを受けて要塞群に残されていた艦隊が機雷源に向けられた。そして機雷源を破壊している連合軍に攻撃を仕掛ける。だがそれでも連合軍は攻撃を止めなかった。
それは要塞群の右翼でも同じであった。ジェラールの艦隊に攻撃を受けながらも彼等は要塞群の右翼に展開していた。そして攻撃を仕掛けてきている。
左翼も同じであった。要塞群からの攻撃を受けながらも向かって来る。そして徐々に距離を詰めてきていた。
「何故だ」
それを見てファブリチーニは呻いた。
「何故彼等は死を恐れないのだ。これはどういうことだ」
「もう一つ不思議なことがあるのですが」
「何だ」
ゴンガーザの声を受けて顔を向けた。
「動きが妙ではないですか」
彼は迫り来る連合軍の動きを見ながらそう語った。
「動きが」
「そうです。人の動きではないようなのですが」
「むっ」
ファブリチーニはそれを受けて連合軍の動きを注視した。見れば確かにそうも見える。
「機械のようだな」
「司令もそう思われますか」
「うむ。まるでロボットの様だ。しかも出ているのは全てかっての旧式艦ばかりだ」
「はい」
「確か連合軍は新型艦に全て換えているのだったな」
「そうです。そしてそのうえであの巨大戦艦を配備しているのですが」
「その巨大戦艦も一隻もいない」
「それどころか指揮艦すらいないようですが」
「おかしなことばかりだな。やはり何かあるか」
「そう考えるのが妥当かと」
彼等の間に疑念が漂いはじめていた。その日はそのまま戦争に明け暮れた。そしてそれは翌日も続いていた。連合軍は疲れを知らないかのように攻撃を続けていた。
「まだ攻撃を続けているというのか」
それを見てファブリチーニは苦い顔をした。
「連中は疲れを知らないのか」
「やはりおかしいですな」
それを見てゴンガーザはまた言った。そしてそこで艦隊から通信が入った。
「どうした」
「うむ」
モニターにジェラールが出る。彼はいささか憔悴した顔であった。
「何かおかしいとは思わないか」
「卿もそう思うか」
「連合軍の動きが機械的だ。しかもそれだけではない」
「うむ」
「疲れを知らない。本当に人間が乗っているのか」
「それだな」
ファブリチーニはその言葉に対して頷いた。
「一度調べてみる必要があるな」
彼はここで機雷源に向かっている艦隊に通信を入れさせた。すぐに指揮官であるグリルパルツァーが出て来た。見れば機雷源は既にかなり破壊されていた。連合軍もかなりの損害を受けていたが機雷源はそれ以上であった。ここでまた敵が現われた。
「またか!」
今度はジェラールの艦隊に向かって来た。そして攻撃を開始しようとした。
「司令!」
「わかっている!」
ジェラールはここで思い切った戦術に出た。つい先程まで攻撃を仕掛けていた連合軍への攻撃を止め新手に兵を向けた。そして彼等を押しはじめた。ジェラールの艦隊は六十個艦隊、それに対して敵はその半分程であった。数では有利にあった。それだけではなかった。やはり連合軍の動きは機械的であった。それを見たジェラールは動きを読みさらに攻撃を仕掛けた。そして彼等を回廊の出口まで押していった。
「他愛ないな」
ジェラールは笑っていた。だがそれはあくまで表面的なものであった。将兵の士気を鼓舞する為にあえて笑っていたのであった。
(おかしいな)
内心ではそう考えていた。
(やはり動きが単調だ。何かあるな)
彼はここで破壊された連合軍の艦艇を一隻拿捕させた。そしてその中を調べさせた。暫くして部下から報告が入った。
「どうだった」
「中に人は全くおりませんでした」
部下はそう報告した。
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