第三十三部第二章 優勢な中でその二
「それではそのように」
「ハサン軍に対しても」
「機雷を潮流に乗せるのです」
ブルコルジはまた言った。
「今はそれに専念します。宜しいですね」
「はっ、それでは」
「そのように」
これで今の行動が決定した。アヤグーズ、ハサン協同軍は今は首都惑星アッサルームで動かず宇宙潮流に乗せて機雷を撒布することにした。まずはそれは順調に進みアッサルームの剥く雑な潮流に乗り機雷達は流れる。それは当然ティムール軍からも確認された。
「主席、機雷が」
「来たのだな」
「はい」
旗艦イズライールの艦橋において報告を聞くシャイターン。彼は今三十個艦隊を率いてアッサルームの入り口にいた。そこで今まさに進撃を開始しようとしていたのだ。
「宇宙潮流に乗せてきています」
「そうか」
それを聞いても動じるところはなかった。かえってこう報告する参謀に対して問うのであった。
「それは複数の潮流に乗せているな」
「はい。今回流したのは第二潮流及び第四、第五、第六各潮流です」
「ふむ」
それを聞いても表情を変えない。ただ聞いているだけだ。今回の作戦においてティムール軍はアッサルームの潮流を番号で数えてわかりやすいようにしているのである。
「その四つか」
「こうなっております」
艦橋の中央にある三次元地図に潮流が映し出される。それぞれのカラーで描かれわかりやすいようになっている。そこで四つの潮流が点滅するのだった。
「この四つが」
「そして今最初の機雷はどうなっているか」
「最初の機雷はこうなっております」
今度はそれぞれの潮流のある部分に黒い斑点のようなものが浮き上がった。
「丁度こうで」
「全ての潮流に流れているのだな」
「その通りです」
こうシャイターンに述べる参謀であった。
「そして中には間も無く我が軍に」
「来るというのか」
「どうされますか?」
怪訝な顔でシャイターンに問うてきた。
「すぐに対処せねば危ういですが」
「今来ているのは第一潮流のものか」
「はい」
その三次元モニターを見ながらのやり取りだった。シャイターンも参謀達もそのモニターから目を離しはしない。だがそれを見る顔はそれぞれ違っていた。
シャイターンは冷静沈着そのものの顔であり参謀達は個人差こそあれどそれぞれ危機を感じている顔であった。シャイターンはその彼等に対して告げるのだった。
「捨て置け」
「なっ!?」
「何もされないのですか」
「そうだ。その潮流の機雷は今は何もしなくてよい」
大胆を通り越して無謀そのものとしか思えない言葉であった。その言葉に顎が外れんばかりに驚く参謀達だったがシャイターンの表情は変わらない。
「何もな。それよりもだ」
「ですが」
「それよりもだ」
反論を言わせない口調であった。
「進軍だ」
「進軍ですか!?」
「ですが主席、それは」
「進軍だ」
ここでも有無を言わせない口調で言うのであった。
「よいな」
「進軍ですか」
「機雷のことを言っているな」
それは既に察しているシャイターンであった。確かに参謀達もそのことを言っている。だからこそ制止しているのだがシャイターンの言葉は変わらない。
「それは案ずることはない」
「案ずることはない、ですか」
「まず今来ている第一潮流のものだが」
「はい」
やはりまずはこれであった。
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