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第三十二部第二章 誘いその十一
「こちらから下手なことをしない限りは」
「まずないでしょう」
「元々他の勢力には無関心ですしな」
 これは連合の特色でもある。彼等はエウロパに対して激しい敵対心を持ちマウリアとは友好関係にあるが基本的に彼等だけで留まっているのだ。体外的には内向的傾向があるのだ。
「しかしそれでも」
「彼等があそこにいるというだけで」
「不安になるな」
「その通りです」
 士官達は一斉にモンサルヴァートの言葉に頷くのだった。
「今はですから」
「艦隊を復旧しておきたいのですが」
「それすらも困難なのが現状です」
「そうだ。今は全てにおいて困難だ」
 モンサルヴァートはまた言った。
「確かな軍事力がなければそれで国民は不安になる」
「はい」
 敵を前にして剣も鎧もなければどうなるか。それを考えれば当然である。
「だからこそここはな」
「そうです。一刻も早く軍備を」
「それもまた難しいでしょうが」
「万難を排す」
 この言葉が出て来た。
「今はそういった状況ですな」
「軍のあらゆる面において」
「しかしです」
 士官達の言葉が続けられる。
「口で言うのは容易いですが実際に動くとなると」
「難しいのも事実」
「そうだな。やはり」
「やはり?」
「軍務省及び統帥本部と一度詳しく話し合いたい」
 彼が言うのはこのことだった。
「すぐにな」
「すぐにですか」
「今夜だが」
 話は実に早かった。
「夕食は軍務相及び統帥本部長と会いたいな」
「御二人とですか」
「そうだ。その調整をしておこう」
 ここで壁にかけてある時計を見た。見ればまだ午前である。十時になったばかりだ。オリンポスの時間は地球と同じ二十四時間なのだ。
「今日はな」
「わかりました。それでは」
「それもまた」
 これに応えたのは秘書官達だった。彼等も部屋にいてモンサルヴァートの仕事を手伝っていたのである。彼等も仕事に終われているのである。
「ですが長官」
「何だ」 
 秘書の一人の言葉に応える。
「最近御身体が」
「殆ど寝ておられないのでは?」
「寝ていることは寝ている」
 これについてははっきりと述べるモンサルヴァートだった。
「毎日な。時間を見てな」
「そうなのですか」
「一日四時間は寝ている」
 そしてこう告げた。
「最低限な」
「四時間ですか」
「それでも寝ないよりはずっといい筈だが」
「確かにそうですが」
「それでも」
「言いたいことはわかっている」
 秘書官達に述べ返す。
「それはな」
「その通りです。やはりより多くの睡眠時間が必要です」
「こうした生活を続ければ」
「過労か」
 この言葉を出した。
「それだな」
「はい、もうかなりの時間を勤務しておられますし」
「何処かでじっくり休まれないと」
「それもわかっているが」
 なおエウロパではこうした勤務時間については連合よりも五月蝿い傾向にある。とりわけ労働者達はそうである。一日八時間で多いとされるのだ。
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