第三十一部第五章 三本のワインその三十四
「それもまたそれぞれです。おそらくそれも分かれます」
「帰化と新国家に」
「どちらがいいとは決して言えないものです」
マシュハドの言葉はさらにはっきりとしないものになっていた。顔にもそれが出ている。
「選択肢としましても」
「連合としてはです」
「ええ」
「どちらの用意もできます」
かなり寛容な言葉であると言えた。
「そのどちらも。つまり」
「我々次第というわけですね」
「そうなります。やはり最終判断は貴方達に委ねられます」
「我々にですか」
「とりわけです」
ここで八条はマシュハドの顔を見るのだった。目が真剣なものになっている。
「上層部、つまり軍では」
「我々ですか」
「それで宜しいですね」
その真剣な顔で彼に問う。
「場所は同じで。葬儀はその形で」
「はい、私としましては」
彼は珍しく一人称を私とした。普段はわしなのであるが目の前にいるのは国防長官である八条であることからこうしたのである。彼を上司だと認めているのだ。
「それで宜しいかと」
「わかりました。ではそれで」
「はい、それで御願いします」
これでこのことに関する話は終わった。しかし話はこれで終わりではなかった。
次に八条は。少し時間を置いてからマシュハドに対して言うのであった。それは」
「それでですね」
「はい、今度は一体」
「元帥宛に届き物があります」
「わし・・・・・・いえ私にですか」
「その通りです」
また述べるのであった。
「お渡しして宜しいでしょうか」
「届き物とは」
そう言われても今一つわからない様子のマシュハドであった。今まで真剣そのものであったその顔が怪訝なものになっているのがその証拠である。
「何でしょうか」
「既にチェックはしてあります」
こうマシュハドに述べるのだった。
「まずは安全なものです」
「それで何でしょうか」
「ワインです」
マシュハドへの返答はこうであった。
「ワインですが。連合産の」
「ふむ。連合のものですか」
「受け取られますか」
マシュハドの顔を見つつ問う。
「そのワインを」
「一つ御聞きしたいことがあります」
マシュハドはここで冷静な顔で八条に尋ねた。
「宜しいでしょうか」
「ええ。何でしょうか」
「そのワインの贈り主は」
彼が問うのはそこであった。贈り主のことを問うたのである。
「どなたですか、一体」
「それがですね」
しかしここで。八条は首を横に振るのだった。
「わからないのです」
「わからないのですか」
「はい」
この問いには首を縦に振るのだった。
「全く。誰が誰なのやら」
「差出人不明とは」
それを聞いて目を顰めさせるマシュハドであった。
「また随分と怪しいですな」
「しかし毒物は混入されていません」
これに関するチェックのことがまた話される。
人気サイトランキング
小説・詩ランキング
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。