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第三十一部第五章 三本のワインその二十四
「だからだ。やはりエウロパとは」
「常に衝突する可能性があるのですね」
「今にしろ備えは置いてある」
 ティムールはエウロパと国境を接している。だから今ハサンと戦争中である今もエウロパとの境には兵を置いているのである。置かずにはいられないのだ。
「何があってもいいようにな」
「そうですね。あれは」
「確かに」
「連合と戦う可能性は皆無ではないが極めて少ない」
「しかしエウロパとは」
「それよりずっと可能性は高い。それを覚えておくようにな」
「はっ」
 従者達は一斉に一礼する。ここでシャイターンはさらに言うのであった。
「ワインだが」
「ワインですか」
「連合のものは輸入していきたいな」
 こう述べるのであった。
「美味いことは美味かった」
「左様ですか」
「しかしだ」
 そしてまた言うのである。
「エウロパのワインは不要だ」
「不要ですか」
「そうだ、不要だ」
 言い切りであった。
「現在も未来もな。過去もそうだったが」
「不要ですか」
「そうだ。エウロパのワインは全く必要ない」
「エウロパはですね」
「連合のそれとは違う」
 連合も出してみせる。あくまでこう言うのだった。
「それはいいな」
「はっ、それでは」
「エウロパに関しては」
「それではだ」
 このことを伝えると同時に今のワインの最後の一杯を飲んだ。丁度食事も終わっていた。幾つか置かれているデザートのうちから一つを選んで食べたのである。それはケーキだった。見ればサハラのすぐりを使った生クリームのケーキである。それ自体はエウロパ風であった。
「午後は作戦会議だったな」
「はい」
 従者の一人が答えた。
「その通りです」
「そうか、わかった」
 その言葉を聞いてまずは納得した顔で頷くシャイターンであった。
「では部屋の準備をしておいてくれ」
「わかりました。それでは」
「そしてだ」
 シャイターンはここでまた言うのだった。
「何か」
「先程のワインだが」
「連合からのワインですね」
「そう、それだ」
 話はワインに戻っていた。シャイターンはあえて戻してきたのである。ここに何かしらの意図があることは誰の目にも明らかであった。
「これは私だけに贈られたものではない」
「閣下だけではないですか」
「余興ならばだ」
 また余興という言葉を出してもみせる。
「おそらくこれはだ」
「他の誰かにもですか」
「それが誰かというとだ」
 彼はそこを言うのだった。この目がまた実に鋭いものだった。
「おそらくは二人だ」
「二人ですか」
「一人はまずアヤグーズのブルコルジ女王」
「彼女が!?」
 ブルコルジと聞いて従者達の目が動いた。シャイターンの後ろにいる六人の仮面の将校達だけは表情を伺い知ることができなかった。
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