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第三十一部第五章 三本のワインその十四
「これに関してはな。確かに連合のワインは美味い」
「はい」
「しかし。慣れているのはやはり」
「サハラのものだと」
「ワインの色は血の色だ」
 俗にこう言われることもある。かつてワインというものを知らない日本人は来日してきた静養人達が赤いワインを楽しんでいるのを見て血を飲んでいると思ったりもした。なおこれが鬼が人の血を飲むという話になったのだという説もある。鬼は平安時代に日本に流れ着いた白人だというのだ。
「血なのだ。だから」
「サハラのものがいいと」
「私はそうだ」
 やはり彼の嗜好であった。
「サハラのものが一番合うのだ」
「サハラのものですね」
「これからもそれで頼む」
 見れば連合のワインは遂に一本空けてしまっていた。シャイターンは酒がかなり強く一回の食事でワインを何本も空けたりする。
「そうだな。さし当たっては」
「はい、さし当たっては」
「コムのワインを頼む」
 今彼等がいるこの星系だ。
「ここのワインも有名だったな」
「生産量こそ少ないですが」
 これはコムの葡萄農園の面積と関係がある。コムはアヤグーズの重要な戦略拠点であり軍事拠点でもあった。だから農地z全体の面積が小さいのである。
「味はよく言われております」
「ではそれをもらおう」
 これで話は決まりであった。
「そのコムのものをな」
「畏まりました、それでは」
「だが。美味いことは美味い」
 ここで彼は話を連合のワインに戻してきた。
「それもかなりな」
「左様ですか」
「そうだ。連合か」
 次に彼は連合に対して考えを向けさせた。
「統一した暁には彼等と向かい合うことになるが」
「向かい合いますか」
「好むと好まざるにも関わらざるにな」
 こうも言うのであった。
「どちらにしろ。境を接するからにはだ」
「向かい合うことになりますか」
「その通りだ。だからだ」
 また言うシャイターンであった。
「連合のことは今以上に知らなければならないな」
「連合のことを」
「それでは閣下」
 従者達は今のシャイターンの言葉に対して問う。実は彼等はただの従者ではないのだ。簡単に言うならば小姓である。シャイターンは将来の幹部候補生を従者として側に置きそのうえで彼等に対して様々な教育を施しているのである。だから彼等も今問うのであった。
「連合とは融和でしょうか」
「それとも」
「それは彼等次第になるな」
 シャイターンは届けられた新しいワインを飲みつつ語るのだった。
「あくまでな。彼等次第だ」
「連合次第ですか」
「私は連合に関心はある」
 まずはこれを言う。
「しかし。興味はないのだ」
「関心はあるが興味はない」
「それは一体」
「連合については知りたい」
 これは紛れもない事実であった。
「しかしだ。連合にある文化や資源、富、領土、人材といったものには」
「興味はないのですね」
「そうだ、全くな」
 連合のそうしたことには一切興味がないと断言するのであった。
「ないな。どうでもいい」
「左様ですか」
「サハラが統一されればそれでいいのだ」
 シャイターンの野心、言い換えれば目的はあくまでサハラ統一までだ。それから先には一切ないというのだ。つまり彼の野心には限度があるのだ。
「それだけでな」
「サハラまでですか」
「では聞こう」
 従者達に対して問う。
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