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第三十一部第四章 あぶれ者その十六
「凄まじい攻撃だがな」
「だがそれ以上にだ」
 話がさらに進められていく。
「その発想がわからないな」
「わからないどころではない」
 これは驚愕の言葉であった。
「本当に。コロニーレーザーを前線に持って来る」
「労力だけでも想像を絶する」
 本来コロニーは惑星や衛星の周りを回っているものだ。それを艦隊と共に運用するとなるとそれだけでかなりの労力を要するのだ。コロニーは艦艇と違うのだから。
「それを為しえたアッディーン副大統領」
「やはり只者ではない」
 このことが認識されていく。
「それによりハサン軍の防衛ラインを突破するとは」
「ハサン軍も予想だにしなかったに違いない」
「それではだ」
 ここまで話されたうえでそれまでの話が一旦整理された。
「ハサン軍は劣勢に傾こうとしているな」
「うむ、そうなるな」
「このままでは危険だ」
 やはりハサンに立って話が為されている。これもまたある意味では重要なことであった。
「安定政権であるハサンが倒れれば」
「我等の帰還どころではないぞ」
「帰るとすればだがな」
 無事に祖国に帰るには安全が保障されていなければならない。今までは少なくとも東方はハサンがそれを保障していた。しかしそれが大きく揺らいでいる。だから彼等は今このことを問題視して話をしているのである。
「ハサン似は安定して欲しい。いや」
「そうだ」
 話がさらに踏み込んだものになった。
「出来ればサハラを統一して欲しいものだが」
「オムダーマンもティムールもわからないところがある」
「とりわけティムールはな」
 彼等の中にはティムールに対して疑念を抱いている者もいた。そしてそれが何故なのかも彼等は自分達でよくわかっていたのであった。
「シャイターン主席。どう思うか」
「英雄だそうだな」
「そう、英雄なのは間違いない」
 彗星の様に姿を現わしエウロパ軍の侵攻を防ぎ一国の主となり北方を統一した。瞬く間にそれだけのことを成し遂げた彼は今やサハラの英雄となっているのだ。このことは遠く連合にも伝わり当然難民である彼等の耳にも入っているのである。しかしであった。
「だがな。危険だな」
「英雄なのは間違いない」
 話がさらに進められる。
「しかし策略を好む」
「目的の為には手段を一切選ばない」
 シャイターンが連合でよく言われていることである。サハラではそれはあまり考慮されていないが離れておりしかも部外者である連合ではこのことはよく認識されていたのだ。
「しかも野心家だな」
「サハラを統一したならばさらに何かをするのではないのか?」
 彼等はこのことを危惧していたのである。
「連合との戦争を開始しはしないか」
「若しくはマウリアと」
「そういえばだ」
 ここでも一つの現実が語られる。
「連合は今サハラとの境に防衛ラインを敷こうとしているな」
「うむ」
「密かにだがな」
 これは今は連合では殆ど注目されてはいないが生粋の軍人である彼等は気付いていたのだ。軍人だからこそ気付くことであるのだ。
「備えは進めているな」
「サハラに対してな」
「万が一ということか」
「やはりシャイターン主席を警戒してのことか」
「ティムールだけではないだろうがな」
 なおこの防衛ライン施設は名目上は難民の保護となっている。だがこれに気付いている者達はそれが方便だということも見抜いているのである。
「オムダーマンもな」
「とりわけティムールだな」
「やはりティムールか」
「ハサンが滅びる」
 この仮定が今話された。
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