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第三十一部第四章 あぶれ者その六
「公に差別したらまずいよな」
「ああ、それはな」
「幾ら何でもな」
 流石にこれはまずいというのは誰でもわかることだった。連合は平等主義と人権を掲げている。凶悪犯に対する酸鼻を極める死刑もその人権を侵した者に対する処罰であるのだ。もっともここには明らかにそうした残虐さを楽しむ感情も存在しているのであるが。
「やばいしな」
「それはないか」
「大体だ」
 話がさらに突っ込まれる。
「異邦人だからって差別したらそれだけで批判されるぞ」
「そうだよ、その通りだ」
「酷いぞ、それは」
 良心の問題もあるのだった。ごく稀に良心を持っていない人間、所謂サイコパスという人格障害者も存在しているが大抵の人間には良心がある。その良心が許さないのだ。
「差別はよくないぞ」
「その通りだ」
「だからだよ」
 ここで話が元に戻ったのだった。
「露骨なことはできないんだ。絶対にな」
「絶対にか」
「しかもこっちが受け入れた」
 もう一つ問題が述べられた。
「難民としてな。来る者は拒まずでな」
「ああ、そうだったな」
「エウロパに追い出された難民達を救えってことだったな」
 それを大儀名分として難民を受け入れたのである。ここでもエウロパに対する激しい敵愾心が存在していたのだ。しかもそれだけではなかったのだ。
「だからだよ。無碍には扱えないんだよ」
「そういうことか」
「それにだ」
 今度は連合の法律に根拠がある話になった。
「帰化すれば連合市民だな」
「ああ」
 実際にマウリア、サハラ各国から連合市民になる者も存在している。とりわけサハラからは戦乱から家や国家を失った難民達が連合に帰化するケースが存在しているのだ。
「だからだ。本当に粗末には扱えないんだよ」
「じゃあ義勇軍は何なんだ?」
 あらためて義勇軍について語られる。
「やっぱりあれは俺達の盾なんだろ?」
「それは事実だ」
 これについては否定されないのだった。
「戦慣れした彼等を前線に立たせて戦わせているのは事実だからな」
「それは否定できないか」
「ああ、それにだ」
 話がさらに続けられる。
「これで戦勲を挙げるな」
「ああ」
 話がさらに動く。
「そうなれば難民達の評価もあがるな」
「確かにな」
 この流れは必然だった。新入りが何かしらの功績を挙げなければならないのはどの社会でも同じである。とりわけそれが異邦人であるならば余計にだ。
「じゃあ向こうも向こうで義勇軍に入る必要があるのか」
「そういうことになるな」
 話がここで繋がった。
「難民全体の為にな」
「命をかけて戦ってか」
「歴史上よくある話じゃないのか?」
 冷徹とも取れる意見まで出された。
「こういう話は」
「あるのか」
「ほら、フランスだ」
 エウロパの一国であるのは言うまでもない。また今ここで話をしている連合の兵士達がこの国を嫌っていることもまた言うまでもないことだ。
「あの国には昔外人部隊があってな」
「その外人部隊を酷使していたんだな」
「そうさ。義勇軍以上にな」
 さりげなくフランスに対する悪口が入っていた。
「連中はそういうのは全然平気だしな」
「エスカルゴ野郎共は相変わらずなんだな」
「昔から性格の悪い連中だぜ」
 フランス人に対する蔑称である。他には蛙とも言う。何故蛙と言うかというとフランス人達が蛙を食べるのとその軍服の色が青だったからだ。なお連合ではその蔑称の名付け親のイギリス人達をローストビーフ野郎だの味音痴の貧乏貴族だの言う。こちらもかなり口が悪い。
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