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第三十一部第三章 メッセージその二十四
「今の軍務省は少し騎士道が過ぎるな」
「軍人として非常によいことですが」
「だが政治はできないところがあるか」
「少なくとも裏の政治は」
 ということだった。今ではボーデンが首相に専念しその後任的な存在として内務省も取り仕切っているだけにカミュの言葉には説得力があった。
「無理です。騎士には」
「紳士にはできるがな」
「スパイは紳士の仕事」
 カミュはふとこの言葉を出してみせた。
「ジョンブル達の言葉です」
「イギリス人か」
「はい、彼等です」
 この時代にも生きているイギリス人への蔑称である。フランス人とイギリス人はこの時代においてもまだ仲が悪いのである。これはもうどうしようもないものだ。
「彼等の言葉ですが忌々しいことに事実です」
「そして貴族にもできるな」
「騎士にはできないだけです。そして」
 カミュは言葉を続けていく。
「見送りとなりましたが。あの長官はあの地位にいればいるだけエウロパにとって脅威となります」
「確か軍人出身だったな」
「はい」
 八条の経歴はもうエウロパでも知られている。
「数年ですが日本軍にいました」
「そうだったな。経補将校だったか」
「そうです。それから政治家に転身しました」
「連合では少ない軍人出身の政治家か」
「その通りです」
 キロモトもそうであるが実際連合では軍人出身の政治家は非常に少ない。キロモトの経歴もまたそれを考えれば連合ではかなり異質なものであるのだ。
「だが文民だったな」
「現役の武官ではないので」
 そうなるのだった。武官でなければ文民となる。例え軍人出身であっても。連合でもエウロパでもこの考えは同じである。
「そうなります」
「文民であそこまでの軍政ができるというのか」
「例え過去に軍にいたとしても」
「傑出しているな」
 ここでは素直に八条を褒めるボーデンだった。
「憎らしいまでにな」
「ですが今暗殺はできません」
「それは無理か」
「バチカン以外の潜入ルートを確かなものにしない限り」
 カミュは言うのだった。
「不可能です」
「忌々しいことだな。あの男はエウロパにとっては一刻も早く取り除いておきたいのだが」
「その通りです。スキャンダルを暴くにも」
「無理か」
「我等と結託している市民団体は根こそぎ潰されてしまいました」
 実はエウロパはそうした市民団体も連合内部に設けていたのである。しかし彼等は連合軍秘密部隊や中央警察によりあらかた潰されてしまったのだ。市民団体の傘を被って怪しげな行動を行うのはこの時代でもままあることである。無論全ての市民団体がそうではない。
「残念なことに」
「今の中央警察はかなり優秀らしいな」
「はい、それもかなり」
 カミュは言う。
「おかげでこれといった行動を取れなくなっています」
「参ったな。では今の我々は」
「忌々しいですが内政に専念しましょう」
 これがカミュの考えだった。
「今は。それにエウロパの現状を考えると」
「それか」
「そうです。国力の回復に務めるべきです」
「やはりそれだな」
「ただ国力の回復に務めるべきではありません」
 彼はこうも言い加える。
「軍の回復もまた」
「回復させるべきだな」
「今基幹戦力は三五〇個艦隊」
 おおよその数字である。
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