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第三十一部第三章 メッセージその十四
「天麩羅もいいけれどね」
「天麩羅もですか」
「両方入っていたら最高ね」
 こうも述べる。
「おうどんだけでなくおそばもね」
「おそばもですか」
「おうどんもおそばも」
 伊東はさらに言葉を続けていく。
「油ものが合うじゃない。だから揚げはいいのよ」
「確かにその通りですね」
「うどんやそばにはそれです」
 これはうどんにもそばにも言えることだった。どちらもあっさりとしたものであるだけに油ものが合うのだ。そうめんもまた然りである。
 そしてスタッフの一人が。ここでそのそうめんも話に出した。
「では総理」
「ええ。何かしら」
「そうめんにも揚げか天麩羅が」
「おそうめんの場合は厚あげね」
 限定しているがやはりであった。
「天麩羅も最高ね」
「ですね。そうめんもまた」
「あっさりしたものと油っこいものの対比こそが最高なのよ」
 にこやかに笑いながら話を続けていく。そうして話を自然に巾着に戻していく。
「巾着もそうね」
「巾着もですか」
「揚げの油っこさと餅のあっさりさが絶妙に組み合わさるわね」
「そういえば」
 スタッフ達もそれに気付く。巾着もまた同じということだった。
「そうなりますね。しかも」
「お餅を隠しているわね」
「はい」
 何気に隠しているという話になった。
「お餅をね。隠しているのが大事なのよ」
「政治と同じですね」
「そう、その通り」
 スタッフの一人の今の言葉に会心の笑みを浮かべる。その通りであったのだ。
「重要なものは時として覆って隠すのよ」
「そういうことですか」
「そういうことよ。それじゃあ巾着は」
「ええ、是非共」
「頂きたいものです」
 ここまで話を聞いて受けないわけにはいかなかった。話は完全に伊東のペースになっていた。彼女はその流れで話を進めていく。
「そう言って貰えると嬉しいわ。さて」
「ええ」
 皆伊東の言葉に応える。
「巾着が来たわ。丁度人数分ね」
「人数分というとまさか」
 スタッフの誰もがここで伊東の考えがわかった。
「最初から読んでおられたのですか」
「常に相手の数手先を読む」
 狐の笑みだった。今は。
「それが一国の首相の仕事の一つよ」
「首相のですか」
「貴方達も学んでおいて欲しいわね、これは」
 また学者の顔になっていた。むしろ教師と言うべき顔であろうか。
「相手の数手先を読むのは」
「おいそれとできるものではありませんが」
「だからこそよ」
 こうも述べてみせる伊東だった。
「余計に学ぶべきものなのよ」
「そうなりますか」
「誰でも身に着けている能力だけでは駄目なのよ」
「首相はですか」
「そうよ。だからこそ」
 伊東は言う。
「学ばないといけないのよ。こんな能力は生まれた時から備わるものではないし」
「後天的にですか」
「相手を見ることも大事よ」
 相手という言葉も出してみせた。
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