第三十一部第三章 メッセージその四
「そんな必然性は」
「我々の中でさえ武力なぞ使う必要はないのに」
この場合は連合内部でのことだ。
「それでどうしてサハラになぞ」
「シャイターン主席の命でさえ」
興味のないことである。本当にどうでもいいのだ。
「どうこうする必要はありません」
「利害関係はあくまで互いを殺し合う性質のものではありません」
「それだ」
これを指摘したのは劉だった。奇しくも彼もまた自分のいるホテルの一室で自身のスタッフ達を集めて話をしていたのである。そこで彼は言うのだった。
「我々の関係は生きるか死ぬかの関係ではないな」
「はい、確かに」
「交流か若しくは無関心か」
中国のスタッフ達が主に対して答えていた。奇しくもマックリーフに対するアメリカのスタッフ達と同じだった。何もかもが同じであった。
「そういった関係です」
「ですから結果として」
「我々にはその牙は剥かない」
劉は断言してみせた。その小さな目に強い光をたたえて。
「決してな」
「決してですか」
「そうだ。だから彼の謀略は我々には向けられない」
彼は言う。
「それは安心していい」
「では。話し合いをしていいと」
「そうだ。利害関係の生じない相手だからな」
それは他ならぬ自分達のことである。
「手を結べる。もっともそれも深い関係ではないがな」
「深い関係ではないですか」
「サハラはサハラ、連合は連合だ」
またこの言葉が出る。
「連合にとってはサハラがどうなってもいい。権益さえ保障されれば」
「ではとどのつまりは」
「ある程度の交流でいい。その中で権益を確保できればそれでいい」
「極論すれば相手は誰でもいいと」
「その観点から見ればティムールでもいい」
話は確信の色を帯びてきていた。
「約束を破らないことがわかっている相手ならな」
「では。ティムールに関しても」
「そうだ。私はこう考える」
彼は結論を述べた。
「考えとしてオムダーマン、ティムール双方と交流だな」
「双方とですか。それは」
「不都合か?」
平然とした顔でスタッフ達に問うてみせた。
「それは」
「流石にそれは」
「いささか」
スタッフ達は今の劉の言葉には顔を曇らせるのだった。彼等はこれに関しては賛成できないものを感じていた。それで今の顔になっているのだ。
「勇気があるというものではなく」
「どうなのでしょうか」
「不都合があるのか」
劉はここで彼等に問うた。すると返答はこうであった。
「交流するのならどちらかとでは?」
「やはりここは」
「それかサハラに絞るか」
「三つのうち一つです」
「そう選ぶのが妥当だと」
「違うな」
しかし劉は彼等のその言葉を否定するのだった。
「違うというのですか」
「それはまた何故」
「では聞くが我々は彼等を裏切っているか」
そうスタッフ達に対して問い返してきた。
「裏切っているかというと」
「それは」
「三国のどれも裏切ってはいない」
彼は言い切ってみせた。
「そうだな。裏切ってはいない」
「それはそうですが」
「裏切っていなければ何の問題もないのだ」
こう結論付けてもみせたのであった。
「裏切らなければな。それが怨まれない条件だ」
「怨まれない為の」
「若し三国のうち一国について」
「はい」
「その国が滅亡する」
これは仮定だが現実を見ている仮定だった。
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