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第三十一部第一章 勝利の影響その二十三
「そんなことは。到底ね」
「ではどうすればいいでしょうか」
「一番簡単なのはあれよ」
 それでも策はあった。それについて述べるのだった。
「お見合いよ」
「お見合いですか」
「これならどうかしら」
 その是非を小柳に対して問う。
「これなら問題はないと思うけれど」
「そうですね。ただ」
「ただ?」
「やはり時間が」
「ないというのね」
「残念ですが」
 少し目を伏せての言葉であった。
「ないかと。少なくとも今は」
「そうね。なかったわね」
 今さっき自分が言った言葉を思い出す破目になって後悔する伊東であった。
「彼はあまりにも多忙だから」
「せめて中央政府国防長官を辞任してからでしょうか」
「今はまず無理なのね」
「何でも毎日真夜中まで国防省にいて朝早くにらしいですから」
「何処の諸葛亮孔明なのかしら」
 言わずと知れた中国三国時代の蜀の宰相であり軍師である。非常に生真面目かつ勤勉な人物でありその日常は仕事に明け暮れていたのである。伊東はその彼の名前をあえて出して呆れてみせたのである。
「全く。昔から生真面目な子だったけれど」
「国防省設立当初はほぼ不眠不休だったそうです」
「タフね、本当に」
「流石元軍人と言うべきでしょうか」
 小柳はこう述べた。
「やはり」
「それどころじゃないわね。そうね、とにかく時間がないのね」
「はい」
「全く。休める時でも休めないんだから」
 八条のその性格を知っているだけに溜息をつくのだった。
「困った子だこと」
「最近ではサハラ各国に対する情報収集も盛んに行っているそうです」
「サハラのなのね」
「はい。何か考えているようです」
「防衛ね」
 伊東はすぐにそう察しをつけた。
「サハラとの境に強固な防衛ラインを築くって話があったわよね」
「ええ、それは」
 小柳はこの話も聞いていた。
「私も聞いています」
「それね。多分」
「そうなのですか。それでですか」
「第一目的はね」
「第一目的」
「多分それだけではないわ」
 伊東のその目にさらに知的な光が宿る。こうした時に彼女は普段以上の冴えを見せるのである。つまり狐そのものになるのである。
「サハラ内部のことも詳しく調べているでしょうし」
「内部もですか」
「宙理にそれぞれの星系の状況」
 そこまで話を及ばせる。
「当然戦略や戦術のパターンもね。調べていると思うわ」
「では当然文明や文化、政治等も」
「勿論そうでしょうね」
 小柳の問いにも答えてみせた。
「ありとあらゆることに関してね」
「それではまるで攻める時のようです」
 小柳はそこまで話を聞いてこう述べた。
「少なくとも防衛の為だけでないように思えますが」
「何事も徹底的によ」
 しかし伊東はここで言った。
「調べるのならそれこそね」
「ですね。それは」
「何事もね。スポーツだってそうじゃない」
「ええ、それは確かに」
 言うまでもなくその通りの話であった。小柳は伊東の今の言葉に対しても頷く。
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