第三十一部第一章 勝利の影響その十三
「戦場での勝利を。そして」
「そして?」
話はさらに続くのだった。
「災害に関してはそれぞれの神々を」
「多いわね、それも」
「はい、かなり」
ギリシアも北欧もまた多くの神々を擁している。その数はそれぞれかなりのものだ。少なくとも連合のそれぞれの神話の神々にひけは取らない。流石に日本のそれには劣るであろうが。日本の神々はまた特別に数が多いからだ。多いだけでなくそれぞれの名前も複雑なのだ。
「その願いが聞き届けられたということでしょうか」
「けれど。その人口過密と狭さはどうにもならなかったのね」
「連合は広く戦乱はなかったですが」
それはなかった。確かに。
「ですがその分災害は多かったです」
「そうね。災害の割合で言えば」
「はい」
「エウロパは連合の十分の一程度かしら」
そこまで違っていたのだ。連合にあるどの星系も惑星も災害はかなり多いのだ。噴火にしろコントロールできるとはいえ完全ではないのでやはり起きるのだ。
「羨ましいことではあるね」
「我々にはその加護はなかったのですね」
「けれど個々の惑星は豊かだった」
「ええ。それに」
「その数も多い。禍福というものはわからないものね」
「ある程度拮抗しているものでしょうか」
話は政治から哲学にも及んでいた。
「やはり。一つが満たされれば一つが災いを招く。そういったふうに」
「それはあるわね。連合もエウロパも幸福があれば」
「不幸もある」
そうも言うのだった。
「やっぱり。そうね」
「そうなりますか」
「けれど。あれね」
「あれといいますと」
「いえ、これは私が思っただけよ」
こう前置きしてまた述べる伊東だった。
「けれどね」
「ええ。けれど」
また言う。
「連合で信仰されている神々は多いわね」
「ええ、それは」
その通りだった。やはりその数はかなり多いのである。それだけ連合が多様な文明、文化を包容しているということでもあるが。
「ではその分だけ」
「加護もあるのでしょうね」
「そうなりますか」
「それで思うのよ」
そのうえでまた述べる。
「若し彼等の神々を取り込んだら」
「ギリシアや北欧の神々をですね」
「そうよ。その場合はさらに加護が得られるわ」
こうした考えは古代からある。他の神々を取り入れて自分達の力にするという考えは多神教では実に多い。ローマ帝国や中南米がその例である。
「どうかしら」
「神々だけはいりますが」
小柳の返事はいささか冷徹なものであった。
「エウロパの者達はいりません」
「一千億の不穏分子はいらないのね」
「一千億もいれば大きな頭痛の種になります」
こうも述べてみせた。
「何をするかわかりませんしそのうえ」
「一千億もの不穏分子への処刑はね」
「できるものではありません」
顔を暗くさせての言葉だった。
「その様なことは」
「そもそも連合は不穏分子なぞいない社会よ」
「はい」
これは建前であるが現実でもある。連合は多様な社会であり自由と平等の社会なのだ。確かに君主も存在しているがそれはあくまで象徴としてだ。大衆民主主義社会というわけだ。二十世紀価値観を付け加えるならばここに資本主義や高度大衆社会といった言葉もプラスされる。そうした社会なので異分子、不穏分子というものは有り得ないのだ。ただしこれは平等を否定するならば別なものとなるのだ。
「それで平等を否定する不穏分子は」
「いていいものではありません」
「そういうことね。だから」
「エウロパ人は連合にはいてはなりません」
「そうね。しかも」
「我々は粛清といったことは。どうにも」
「変わったって言えば変わったわね」
伊東の次の言葉はこうであった。
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