第八部第二章 議会その一
議会
連合とエウロパの対立が激化の一途を辿る中連合の中央議会においても対立が深まっていた。この議会は各国から選出された議員達によって構成されている。二院制である。
ただ連合議会はエウロパとのことにおいて紛糾していたのではない。それは既に意見がまとまっていた。開戦しかないというのが結論であった。
では何に対して紛糾していたのか。それは難民のことであった。今彼等に新たな国家を新設させてはどうかという意見が出ているのだ。問題はその場所である。
候補となる星系は多い。だが何処にするかでもめていた。そしてそれより前に彼等に国家を新設させてよいものかという意見もあったのだ。
「彼等の多くはサハラに故郷がある」
まずこうした意見が出た。
「彼等の多くの本意はやはり帰国である。それよりも帰国の際に協力するべきではないのか」
「エウロパが相手ならそれは不可能だ」
反論はこうであった。
「エウロパは彼等を追い出した。迎える筈がない。それならば新たな場所を提供するべきではないのか」
そしてこう主張するのである。
「彼等の中にも連合への帰属を望んでいる者もいるではないか」
それが根拠であった。しかしこれに対しても反論があった。
「それならば今までそれぞれの国で受け入れてきたではないか」
こう反論されるのである。
「だがもう数が多過ぎる」
しかしすぐにこう返ってくる。
「難民達は既に十億を越えている。彼等にはもう新しい国家を建設する力もある」
「それは否定しない。だが」
「だが、何だ!?」
「これはサハラの問題だ。我々が深入りすることではない。難民を受け入れるだけで充分ではないのか」
「それでは人道上に問題があるのではないか」
「人道ということでは連合は責務を果たしているのではないのか」
「まだ不十分だ」
「私は決してそうは思わない」
二つに別れてそう議論し合っている。だが結論は出てはいなかった。こうした状況がもう何日も経っている。それでも話は解決するめどがたたなかった。
「やれやれといったところだな」
それをナウルの政治学者キンム=ペリはテレビで見ていた。その顔は苦笑したものであった。
「話はそうそう単純にはいかないのが政治じゃな」
見れば黒い肌に銀色の髪に紫がかった青の瞳を持つ老人であった。その目は穏やかな光を放っている。
「サハラのことはサハラの者に任せればいいというのが連合の方針じゃったが」
これは一千年の間変わることがなかった。そうして彼等はサハラとは距離を置いて交流してきたのである。そしてそれは上手くいっていた。
「これからどうなるかの。そもそも」
彼はここで自室の窓の向こうに目をやった。そこには青い海と緑の木々がある。彼の星は熱帯で豊かな海と緑があるのだ。
「サハラにはこういったものがあるのかという話もあるからのう」
連合にあってサハラにないもの、逆にサハラにあって連合にないものもある。だが連合は今まで不足に思ったことはない。サハラもそれは同じである。
それを不足に感じた時にどうなるのか、彼はその時それについて考えた。
「争い、かの」
そしてそう呟いた。それから彼は席を立ちキッチンに向かった。それからそこで彼の住む星の魚料理を楽しむのであった。
中央議会の紛糾は各国の間でも同じであった。彼等もまた難民と彼等により新国家設立に議論を重ねていた。まずはその場所についてである。
「何処にするのか」
それは辺境の星系の中から選ばれることになっていた。しかし大国はここで彼等に影響力を行使するべきかどうかをまず考えたのだ。
彼等に影響力を行使しようと考えているのは彼等と同じ宗教を信仰する者が多いインドネシアやマレーシアであった。連合のイスラム教はサハラのイスラム教徒はかなり変質し、同じ宗教とは思えない程にまでかけ離れてしまっているがそれでも同じムスリムであった。彼等は宗教を利用して彼等を自分達の勢力に取り込もうとすら考えていたのだ。だがこれには当然のように反対する意見があった。
同じアセアンのメンバーであるタイやベトナムがこれに反対したのだ。彼等の多くは仏教徒である。またそれだけでなくインドネシアやマレーシアがこの新国家を抱き込むことによって勢力伸張を狙っていることを見抜いていたのである。彼等にしてみればそれは面白くはない。反対するのも当然であった。アセアンもまた一枚岩ではないのである。
しかもこれに別の大国が肩入れをはじめた。まるで規定事項であるかのようにアメリカや中国も出て来たのである。彼等はタイやベトナムの方についた。彼等の国にはムスリムはあまりいないのである。そしてインドネシアやマレーシアにはカザフスタンやウイグル等ムスリムの多い国がついた。こうしてまず何処に国を置くべきかという段階で早速衝突がはじまった。
「そもそも建国するかどうかすら決まっていないというのに」
実際にはそうであったが話はもう進んでいた。問題は何処に国を置くかという段階にまでなっていたのだ。少なくとも連合の各国の間ではそうなっていた。中央議会よりもそれについては進んでいた。
それが為に話は紛糾していた。結論は容易には出そうにもなかった。だがここで思わぬ仲介者が出て来た。
「それならば我々の側に置いてはもらえないだろうか」
こう申し出て来た国が出たのである。それは何処か。
日本はこの件については積極的に動かなかった。中立であった。ロシアはアメリカ等に近い立場であった。オーストラリアもそうであった。では何処か。
ブラジルであった。旧中南米諸国の間では随一の大国であるこの国が仲介に乗り出したのである。同時にその新国家に対して恩を売ったのだ。これにはどの国も納得した。
「ブラジルなら」
ムスリム側とも仏教側とも関係が少なかった。大国もそれに同意した。こうして新国家は建国された場合ブラジルのすぐ側の星系にその領土が置かれることが決まった。あくまで非公式にではあるが。
「あとは議会の仕事となるな」
それを見て誰かが言った。後はその新国家の建設を認めるかどうかであった。しかしこれはそう簡単にはいかなかった。
「わかった、認めよう」
反対派の領袖達が頷いた時話は終わったと誰もが思った。しかしそれはやや早計であった。
「しかし条件がある」
彼等はここで条件を提示してきたのだ。
「それは」
皆それに対して問うた。
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