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第三十部第五章 突撃戦再びその二十一
「動きだした時は軍にとって最も脆い時だ」
「その通りです」
 彼の副司令官であるマグルーパが答える。見れば彼の階級章はオムダーマン軍中将のそれである。
「その時を狙ってのことでしたが」
「実に上手くいったな」
「はい、これで敵の動きは完全に止まりました」
 マグルーパはムーアに対して答える。
「彼等の狙いは適わないものとなりました」
「その通りだ。それでは」
 ムーアの目が光る。
「このまま次の攻撃に移る」
「次の」
「再び一斉射撃だ」
 彼の指示はこれだった。
「コリームア殿の艦隊が態勢を立て直すまでの時間をそれで稼ぐぞ」
「わかりました」
 既にコリームアの艦隊はハサン軍の左翼に集結しだしていた。この動きもまたアメーバめいていた。離散しそれからまた集まる。まさにそれだった。
 ハサン軍に対してまた攻撃が仕掛けられる。その間にコリームアの艦隊は左翼に集結している。ハサン軍にとっては思いも寄らぬ展開だった。
「な、こんなことになるとは」
「何を考えている、奴等は」
「うろたえるな!」
 だがここでラフコルーサが全軍を叱咤した。
「動揺すればそれで敗北だ。落ち着け!」
「は、はい!」
「申し訳ありません」
 彼の叱咤により全軍我に返った。見事な叱咤だった。
 それにより将兵だけでなく幕僚達も我に返った。そのうえでまた彼に問う。
「司令、それで」
「どうされますか?」
「案ずることはない」
 彼は言うのだった。
「数はまだ優勢、存分に戦える」
「それではここは」
「そうだ。左翼に敵艦隊が集結しているな」
「もう既に集結し終えようとしています」
「そうか、速いな」
 それを聞いて冷静に述べる。
「集結前に向かうつもりだったが」
「残念ですが」
「それでどうされますか?」
「まずは左翼のその敵艦隊を足止めする」
 彼が出した最初の指示はそれだった。
「まずはな。そして」
「そして!?」
「次だ」
 さらに言う。
「正面のあの敵艦隊を潰す。つまり兵を二手に分ける」
「二手にですか」
「では先程と同じですな」
「分けるのは同じだが戦術を変える」
 しかし彼は完全には答えなかった。こう答えたのである。
「変えるといいますと」
「三個艦隊を左翼の艦隊の足止めにする」
 ほぼ同数で止めるというのだ。
「そして残る艦隊で」
「正面のあの敵艦隊を叩く」
「そうだ」
 はっきりと言い切った。
「そして返す刀で左翼の艦隊も殲滅する。機動戦力でな」
「一気にですね」
「最早床と鉄鎚は無理だ」
 それはもう諦めていた。今の攻撃を受けて。だからこその戦術の転換だったのだ。
「ならば。それはそれでやる方法がある」
「左様ですか。だからこそ」
「そうだ。それでいいな」
「はっ」
「了解しました」
 幕僚達は皆司令の言葉に応えて敬礼で返した。
「それではそのように」
「致しましょう」
「第一から第三の各艦隊は左翼に回れ!」
 ラフコルーサはすぐに指示を出す。
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