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第三十部第五章 突撃戦再びその十一
「ですからそれに関しては」
「期待できない可能性もあるか」
「ただ。一つ確実な方法があります」
 先程援助を出したその側近がまた言ってきた。
「確実な方法?」
「はい。何気なく臣民達の窮状を知らせ」
「うむ」
 話はそこにも至る。
「市民達に訴えるのです」
「連合のか」
「そうです」
 彼が次に述べたのはそれであった。
「それは如何でしょうか」
「つまりは彼等のボランティアというわけだな」
 これは太子もわかっていた。連合ではボランティアが盛んだということも知っているのだ。
「市民団体や宗教団体等が期待出来ます」
「連合にはそうした団体が多いな」
「ええ」
 これが連合の特徴の一つだった。彼等は様々な勢力をその中に持っている。市民団体や宗教団体もその中の一つなのだ。ここに連合の勢力の多重さと複雑さもある。
「政府が期待できなくとも彼等は」
「何かあまりいい方法には思えませんが」 
 老人の側近が暗い顔をして述べた。
「それは」
「よくはないと」
「異教徒からの施しなぞ」
 彼が言うのはそれであった。ムスリムとしての誇りだ。
「受けるのは如何なものか」
「いや、その考えは違うだろう」
 太子の側に座す側近が老人の言葉に異議を述べる。
「違うのか」
「そうだ。施しを受けるのは恥ではない」
 彼はこう主張する。
「富める者が貧しい物に行う施しは」
「ムスリムの務めだ」
 老人もそれはわかっていた。これはムスリムの基本の一つだ。
「それはわかっている」
「ならいいではないか」
「いや、だからこそよくない」
 少し聞いただけでは言い掛かりにも聞こえる言葉だった。
「それだからこそだ」
「どういう意味か、それは」
「異教徒だ」
 またこの言葉を出す。
「異教徒から施しを受けるというのは。どうなのだ」
「そんなことはどうでもいいのではないのですか?」
「確かに」
 しかし多くの者はそれを気にしてはいないようだった。案外醒めていた。
「貰ったものは素直に受け取る」
「それでいいのでは」
「そう考えるのか」
「ええ」
「そうですが」
 多くの者はまた老人に答えてみせた。
「それがいけませんか」
「それでいいではないですか」
「そうなのか」
「それよりもです」
 その大勢の中の一人が述べてきた。
「善意を受け取らないというのはやはり」
「確かにそうですな」
 これは多分に理由付けだった。しかしこの場合は精神的に非常に楽になる理由付けだった。人というものは複雑なもので理由を見つけてそれで救われたりもするのだ。
「ですからここは」
「それで」
「いいというのか」
 老人は彼等の言葉を聞いてあらためて考える顔になるのだった。
「そういう考えもあるか」
「ですから深く考えることはありません」
「くれるというのなら受け取っておきましょう」
「わかった」
「それよりも問題はです」
 だがここでそれと関連するがあらたな問題が出された。
「何か?」
「その受け取ったものが有効に使われるかどうかです」
 側近の一人がその問題について語った。
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