第八部第一章 軍人と騎士その四
二人は地球に帰るとすぐに国防省に来た。そして八条の前に来た。
「只今帰りました」
「はい」
八条は執務室で二人の敬礼を受けた。
「サハラはどうでしたか」
「はい」
二人はそれを受けて説明をはじめた。
「やはり砂の星が多いですね。独特の風景です」
「しかも星系自体が複雑な地形です。ブラックホールや磁気嵐等が連合よりも遥かに多いです」
「そうですか」
八条はそれを聞いて思うところがあった。
「話には聞いていましたがかなり険しい場所のようですね」
「そうですね」
二人はそれに答えた。
「少なくとも連合の比ではありません。ハサンはまだましでしたがティムールに入りますと」
「より険しくなっていったというのですね」
「その通りです」
「ハサンは私も行ったことがありますが」
「はい」
「その時もかなり険しい場所が多いと思いましたが。それ以上だとは」
「南方はさらに凄いようですね」
ついこの前アッディーンが併合した場所である。
「通るのは困難かと思われます。まあ我々がサハラに兵を送ることは殆どないでしょうが」
「ですね」
少なくとも彼等はこの時点ではそう考えていた。
「ただ何かと参考にはなりました」
「それは何より」
八条にとってはそれもよいことであった。
「そして条約ですが」
ここで話を本題に持って来た。
「はい」
「シャイターン主席が申し出て来たのですね」
「その通りです」
二人は答えた。
「おそらく何かしらの思惑があるものと思われます」
「ふむ」
それを聞いて考え込む。
「シャイターン主席についても少し聞いたことがありますが」
天才的な戦術と政治、そしてカリスマ性。若き英雄というのが連合における彼の評価である。アッディーンと並んで人気のあるサハラの者であった。
「ただそれだけではないと」
「そうですね」
二人は答えた。
「少なくとも我々はそう思いました。彼と会って」
「わかりました」
八条はそれに頷いた。
「シャイターン主席についてもよく調べておきましょう」
「お願いします」
「そして条約は電話でお話した通りです」
「はい」
「ただ、シャイターン主席ですが」
ここで二人の目の色が再び変わった。
「彼が?」
「はい。近い将来ですが」
「何かありそうですか」
「おそらく。彼は今後サハラにとって最も重要な人物の一人となっていくのではないかと思います」
「その根拠は」
「勘でしかありませんが」
マクレーンが答えた。
「私もそれは同じです」
劉も同じ意見であった。
「ただそれに値する能力はあります」
「そうですか」
八条もそれはわかっているつもりであった。
「では今後のサハラは彼を注視していきますか」
「それが宜しいかと。それにティムールの国力の伸張は目覚しいものがあります故」
「そうですね」
これは既に連合でも伝わっていることであった。
「今はまだ第三の勢力ですが」
「これからもそうとは限りません」
「それでは今後はサハラにも目を向けていくのがいいのですね。サハラがこれ以上動くとなれば我々にも影響があります」
「それが宜しいかと」
「わかりました。それではそちらも」
「はい」
サハラへの政策も決められていった。これも当然の流れであった。
条約の話はすぐにキロモトにあげられた。彼はそれを聞くとすぐにアッチャラーンとカバリエを集めた。そしてそこには八条も呼んだ。
「今の我々のサハラにおける状況だが」
「はい」
三人は一室で四つの椅子にそれぞれ向かい合って座っていた。そして互いに顔を見合わせていた。
「承知の通りハサンと不可侵及び通商条約を結んでいる。これは皆知っていると思う」
「はい」
他の三人は答えた。これは常識の範疇であった。
「そして今ティムールから条約を結びたいとの話が出て来た。エウロパの情報と見返りでな。これにはやはり何かしらの意図があると思う」
「そうでしょうな」
アッチャラーンがそれを聞いて怪訝そうな顔をした。
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