第三十部第四章 難民の行く先その十
「中央警察と同じなんだよ。あと連合の治安を守って」
「各国の軍で充分じゃない」
『こいつ本当に学習能力ないな』
『というか何を見てきてるんだよ』
またネットで実況で書き込まれる。
『連合軍ができて宇宙海賊やテロリストが瞬く間に減っただろ』
『辺境にいる俺なんかそれで随分治安がよくなったんだが』
「いい、マウリアじゃね」
ここでマウリアを出す。
『ほい、またマウリア』
『やっぱり外国出してきたな』
ガラショーフの話の特徴なのだ。必ず外国を引き合いに出す。しかも高確率でマウリアを。これがこのガラショーフの特徴の一つでもある。
「軍は普通にやってるじゃない」
「普通にってマウリアも国軍じゃないか」
「中央軍と同じだよ」
「違うのよ」
その事実を認めようとしない。
「マウリアは普通に辺境でも平和じゃない。過去も」
「だから。国軍が宇宙海賊やテロリストをやっつけてるからなんだよ」
「連合と同じなんだよ」
こういわれるがそれでも聞き入れない。耳がないかの様に。
「違うっていうのがわからないの?」
「同じっていうしかわからないよ」
「全くだ」
誰も彼女に賛成しないのが見事なコントラストだった。完全な喜劇でありガラショーフはその主役になっている。彼女に自覚はないが。
「とにかく。難民はね、すぐに皆返してあげて」
「だから残りたいって人もいるじゃないか」
「その人はどうするんだよ」
「連合が受け入れればいいじゃない」
一見してまともな言葉だった。
「連合各国でね」
「それはやっぱり無理じゃないか」
「やっぱりな」
「連合ってそんなに器の小さい国家群だったの?他の人を受け入れられないなんて」
『そんな問題じゃない』
『いい加減相手のこと考えろ、この馬鹿女』
また実況で書き込まれる。
『最低一つはわかれ』
『御前一回でも正論言ったことあるか?』
こうまで書かれるのがこのガラショーフであった。しかし彼女はまだ言う。
「受け入れてあげないと。度量は」
「難民の人達が自分達の国が欲しいって言ったら?」
「じゃあどっかの国が星系分けてあげればいいじゃない。アメリカでも中国でもロシアでも」
『ふざけるな!』
速攻でその三国のいずれかの国の者のものと思われる書き込みが来た。
『そんなことできるか!』
『いや、あんた何怒ってるのよ』
『つうかどの国の人?』
『ロシアだ』
ロシア人だった。
『ふざけるな。開拓地が一杯あるだろうが』
『ロシアあんなに星系あるじゃないか』
『いいじゃないか、一個位』
『なあ』
からかいの書き込みが次々に入るのだった。実に厳しいが。その間にもガラショーフの言葉は続いている。やはり相変わらずの有様だ。
「だから。どっかの国が分けてあげれば」
「いや、それ無理だから」
また他のコメンテーターから突っ込みが入った。うんざりとした顔だ。人を相手にするものではなく凶暴な動物を相手にしているような顔になっている。
「何処の国もそんなことしませんよ」
「何よ、皆器が小さいわね」
またしても見当違いな言葉が出て来た。
「星系一個位で」
「一個位って言うけれど」
スキンヘッドのコメンテーターの突っ込みだった。
「あんた、星系一個って相当なものだよ」
「連合全部で何千万ってあるじゃない。三千万?」
『四千万だったか?』
『今その位じゃないのか?』
ネットの書き込みがまた続く。
『もっと多かったっけ』
『どうかな』
「そのうちの一個よ。全然平気よ」
「だから。その国の事情があるんだよ」
スキンヘッドのコメンテーターのうんざりとした感じの顔が目立つ。
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