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第三十部第三章 疾風の追撃その四
「何でしょうか」
「オムダーマン軍の動きはどうか」
 それを問うのだった。彼等もオムダーマン軍の動きは警戒しているのである。
「来ているか」
「迫って来ているのは間違いありません」
 部下の一人が答えた。
「我々を」
「そうだな。だからこそ急がなければ」
「カラクーム要塞側は何時でも迎え入れる準備ができているとのことです」
 また部下の一人が答える。
「すぐにでも」
「そうか。それならばいい」
「そういうことです」
「そういえばだ」
 ここでラクジャサーンはまた部下達に問うてきた。
「何でしょうか」
「ハッサームはどうした」
 ハッサームの名を出してきた。
「彼は大丈夫か」
「はい、ハッサーム閣下でしたら」
 部下の一人が答える。
「今のところ安静にしておられます」
「そうか。ならいいがな」
 彼はそれを聞いてまずは安心したように頷くのだった。
「あの時の戦いでの傷がかなり重かったからな」
「確かに」
 部下達はラクジャサーンのその言葉に応えた。
「あの戦いでは多くの戦死者及び戦傷者を出しました」
「その損害は思ったより甚大でした」
 それは彼等の予想を大きく越えたものであった。とりわけ戦傷者が多くその移送もまた彼等にとっては頭の痛い問題となっていたのだ。
「人員だけでなく艦艇もまた」
「それだ」
 ラクジャサーンもそれを言う。
「工作艦は動かしているな」
「動かしていますが何分移動中でして」
「しかも損傷を受けている艦艇が多く」
 追いつかないというのだ。それが問題だった。
「速度は思ったよりも」
「困ったな」
 その報告を聞いてあらためて暗い顔になるラクジャサーンであった。
「もっとも普通に考えてオムダーマン軍の追撃を受ける可能性はないがな」
「はい」
 これは計算に基いての結論だった。
「幾ら彼等でも要塞を掌握してからでは」
「間に合いません」
 こう考えていたのだ。彼等の戦略にも沿っていた。
「ですからこのままでも間に合います」
「安心はしていいかと」
「そうか。不安にかられるのもな」
 ここでラクジャサーンは指揮官の考えになるのだった。
「かえってよくない。ここは落ち着きも必要だ」
「はい、その通りです」
「ですから」
「わかった」
 あらためて部下達の言葉に頷くラクジャサーンであった。
「それではな。このまま友軍の場所にまで向かうと」
「それが宜しいかと」
「それで司令」
 話が変わった。部下の一人が時計を見て彼に報告するのだった。
「何だ」
「時間です」
「時間!?」
「そうです。昼食の時間です」
 それを彼に告げるのだった。見れば確かにその時間であった。この場合の時間は艦内時間である。大抵は地球の時間に合わせている。ラマダンも同じだ。
「ですから」
「うむ。それでは」
 ラクジャサーンはそれを聞いてまずは言うのだった。
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