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第三十部第二章 茶は一つではないその二十一
「そうですね。それでは」
「わかった。それではだ」
 立ち上がった。それからマウリア風の棚からティーカップを二つ出した。陶器のものだ。
「マウリアの陶器ですか?」
「いや、違う」
 それは否定した。彼に顔を向けて。
「連合のものだ」
「連合ですか」
「エストニアのものだ」
 そしてこう答えた。
「向こうから贈られてきた」
「エストニアからですか」
「意外なようだな」
「否定はしません」
 そのことに静かに答えた。実はエストニアは陶器で有名な国ではないのだ。どちらかといえば最先端の電子技術で有名な国だ。小国ながらそれで有名なのだ。
「陶器というイメージは」
「あの国も最近色々とやっているのだ」
 話しながらそのエストニアの陶器を二つ棚から出した。
「電子だけでは駄目だと考えてな」
「そうなのですか」
「どうだ?」
 その陶器を彼に見せた。
「このカップと皿は」
「いいものですね」
 見たところ白と青の色使いがかなりいい。彼の気に入るものではあった。
「特に青が」
「この青を出すのに苦労したとのことだ」
「青をですか」
「向こうの人間から聞いた」
 述べながら机の上にその二つのカップを置く。
「ただ青を出すだけでは駄目なのだとな」
「連合ではそうなのですか」
「青は青でも少し違う」
 青について話す。
「コバルトブルーだが。そこに僅かに群青を入れたそうだ」
「群青色を」
「それで。この独特の青にしたらしい」
「細かいことを考えているのですね」
「かなりな。売る為にはそこまでしなくてはならないらしい」
 こう話す。その青の上に今度は紅い茶を入れた。するとその青が変色し黒になるのだった。
「色が」
「工夫はこれもだ」
 また彼に対して言う。
「色が変わるようにもしているのだ」
「考えたものですね」
 そうクリシュナータに答えた。
「これはまた」
「連合はやはり凄いものがある」
 クリシュナータもまた言う。
「こんなことを考え付くのだからな」
「エストニアですね」
 また国名が出る。
「確かかつてバルト三国で」
「小さい国だがな。それでもだ」
「こうして工夫をしていると」
「言い替えればこうした工夫を常に考えていかないと生きていけない社会でもある」
「連合を見ていて思うのですが」
 連合についての話になった。全体に関するものだ。
「彼等はどうもせわしないですね」
「そうだな。それはな」
 彼のその言葉に頷く。
「常に何かにあくせくしている。いや」
「いや!?」
「何にでもか」
 言葉を言い換えた。『何か』を『何にでも』に。
「何でもそうだな」
「彼等は時間の使い方があまりにもせわしないように思えます」
「彼等にしてみればだ」
 まだ茶に手をつけてはいない。見れば彼もまた。
「我々の方が時間の使い方に問題があるそうだ」
「それもよく聞きます」
 マウリアの者達もよく聞いていることであった。
「時間の概念があまりにも長いと」
「そうでしょうか」
 その彼等にしては全く実感のないことなのだ。彼等にしてみれば時間とは悠久のものであるからだ。しかもここには大きな宗教的思想もあった。
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