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第三十部第一章 戦利品その十
「うどんの丼なんかも凄いですね」
「サラダもかなりだな」
「そうです。フルコースを頼めばそれでもう夜までもちます」
「有り難いことだ。しかも味もいい」
 少なくともバールの好みではあるようだ。
「だからだ。ここは有り難いのだ」
「メニューも多いですしね」
「とりあえず一式あるな」
 連合の主要な国の有名なメニューは一通り置かれている。連合軍の本拠地と言ってもいい場所であるからこれも当然のことであるが。
「文部省の食堂もいいですけれどね」
「あそこのもか」
「あそこのはまた違ったよさがあります」
 そう自分の本来の居場所のことを述べる。
「時々給食みたいなのもありますし」
「給食か」
「ええ。学校の」
 連合では給食もある。給食か弁当どちから選べるようになっているのである。この給食を取り仕切っているのも文部省なのである。
「それの実験用でよく出るのです」
「そうなのか」
「これがまたいい感じなのです」
 楽しげに笑って述べる。話しながらフォークとナイフを手に取ってその人の頭がすっぽりと入ってしまうような巨大なミンチカツを切っていくのだった。
「子供の頃に戻ったようで」
「あれはいいものだな」
 バールも給食と聞いて頬を緩ますのだった。彼もまたミンチカツを切っている。
「食べ易いしそのうえ」
「栄養も考慮されています」
「しかもだ」
 それだけではないのが学校の給食のいいところなのだ。
「味もいいな」
「まとめて作りますからそれだけ」
「そういうことだ。実はだ」
 ここでバールはカツを口に入れながら言う。ミンチカツのそのハンバーグの味と衣の二つが絶妙な調和を口の中で伝えている。それを楽しみながら話すのだった。
「軍の食事の参考にもしているのだ」
「そうだったのですか」
「実際に参考になるな」
 あらためてこう述べる。今度はソースにカツをつけている。ソースの味もまた楽しみたくなったのだ。ソースの他には付け合せのマッシュポテトやレタスも見忘れてはいない。
「あの組み合わせはな」
「ですね。確かに」
 彼もそれに応えて頷く。
「それを考えれば給食というものは」
「決して馬鹿にはできないものだ。充分にな」
「充分にですか」
「そうだ。子供だけのものにしておくのも勿体ない」
 今度はこう述べた。
「大人も食べなくてはな。それを大人用にしたのが」
「軍の食事、というわけですか」
「かなりの要素は入れた。しかしな」
「しかし?」
「まだ研究の余地はある」
 こうも述べた。
「給食の研究ですか」
「そうだ。そうすればよりよい食生活になるだろう」
「将兵がですね」
「それもまた強くする方法の一つだからな」
 話しながらまた一口口の中に入れる。今度はソースをつけたものである。ハンバーグの肉と玉葱、人参の他に衣もあるがそれにソースの濃厚な味もプラスされた。それを食べてみるとさらに味わいがある。食べていて心が楽しくなっていくような感覚であった。
「是非共な」
「そういえばですね」
 彼はオムライスを食べている。赤いケチャップがかけられた黄色い薄いオムレツの下にオレンジのチキンライスがある。それをスプーンで取っている。
「このライスですが」
「ライスか」
「長官の祖国である日本ではとにかく白米が好まれていますね」
「とりわけ粘り気の強い米がな」
「ええ」
 連合では米は普通は細長くそれ程粘らない米が食べられている。だが日本では粘り気のある米が食べられているのだ。これが大きな違いであった。
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