第二十九部第四章 南部戦線の動きその二十三
「全く何が何だか」
「その訳がわからないのが彼ですが」
「今度は何に騒いでいるのでしょうかね」
二人は頭の中に疑問符を幾つも付けながらテレビを見ている。暫く見るとお決まりの発言を繰り返していることがおぼろげながらわかった。
「地獄がこの世に舞い降りる!」
「地獄がですか」
「見えないのか、御前は!」
「私の声が聞こえるでしょうか」
自分の言葉に応える形になったので八条は少し驚いた。
「まさかとは思いますが」
「違う!」
「違うのですね」
今度はわかって突っ込みを入れた。
「それで何を騒いでおられるのやら」
「炎が降り注ぐ」
シャバキは深刻な顔で叫んでいる。
「そ、そうだ」
「いきなりいつもの断言ですね」
「早いですね」
二人はそれを聞いて呟く。途中から彼を観たのでそう思えるのである。もっとも最初から観ても話がわからないのがシャバキという男であるが。
「わかったぞ!世界は破滅するんだ!」
「そうですよね」
「今度は何で破滅するんでしょうか」
「アンゴルモアから大王がやって来る!!」
「アンゴルモア!?」
「今度はお決まりの単語ですね」
シャバキの大好きな単語の一つだ。万能の言語でありこれを出せば大抵は話に辻褄が合う。彼の中だけのことであるが辻褄が合うのだ。
「今度のアンゴルモアは何でしょうか」
「確か以前は」
八条はシャバキの絶叫を聞きながら記憶を辿る。
「何とかいう宇宙人でしたね」
「リトルグレイでしょうか」
千年以上前からバラエティ番組に出ている宇宙人である。この宇宙人も実在するかどうかは一切不明の謎の存在ということになっている。
「リトルグレイを中央政府が匿っているんだ!」
「私達がですか」
「その中心は国防省だ!」
無茶苦茶な断言は続く。
「彼等が連合を!人類を売り飛ばそうとしているんだ!」
「そうでしたっけ」
少なくともその国防省のトップである八条にその記憶はない。そう考えたことは全くない。しかしシャバキの考えは全く違うのだった。
「記憶にないんですが」
「彼の頭の中の長官は違うようですね」
そういうことであった。
「見える!見えるぞ!」
今度は何かが取り憑いた。
「俺、参上!」
「何が参上だったんでしょうか」
「さて」
アンゴルモアの話は何処かに消えようとしている。シャバキは過去を振り返ることは決してないので話の辻褄はどうでもいいことなのだ。
「見えているんだ!八条長官は銀河の覇王になるつもりなんだ!」
「さっきリトルグレイと密約していたのでは?」
その覇王がテレビを観ながら呟く。
「何故その私が覇王になろうというのでしょうか」
「彼は一万人委員会を操り」
「一万人委員会をですか」
「彼等に命じている!人類総洗脳計画を!」
「成程」
本人はそれを聞いて納得することしきりであった。
「私はそこまで悪人だったのですか」
「今おわかりになられたのですね」
「はい」
そうディカプリオに答えた。
「恐ろしい悪人だったのですね」
「しかし。何故テレビで告発されているのに私は無事なのでしょう」
「さて」
すぐに答えがシャバキの言葉となって出て来た。
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