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第二十九部第三章 教会の葛藤その九
「呪わしい。何もかもが」
「その神々の中に放り込まれ」
「しかもバチカンそのものが連合に飲み込まれる」
「忌まわしい未来だ。しかし」
 言葉が変わってきた。
「思えばそれも」
「報いなのか」
「そう、報いだ」
 彼等の中の一人の言葉であった。
「元はといえば我々の撒いた種なのだしな」
「その通りだ」
「それでは」
「そうだ。致し方ない」
 それは認めるしかなかった。彼等も。
「罪は償わなければならない」
「特に我々は」
「神に仕えていながら」
 今度は悔恨が彼等を襲った。それから逃げることはできない。
「罪を犯した。そのことは」
「逃れられはしないのだ」
「だからこそ。連合に行くのだな」
「そうなる」
 答えはもう出ていた。既に。
「忌まわしくともそれが償いなのだから」
「思えば。主を裏切った我々は」
 ここでの主とは言うまでもなくキリストのことだ。彼以外の主はキリスト教にはいない。
「償うしかない」
「悔い改めて」
「十字架を背負う資格もないしな」
 これも自覚していた。
「主のように」
「しかもその十字架も」
 また話が変わった。
「我等にとっての主観でしかない」
「連合の者達にとっては違うか」
「しかも全くな」
 そういうことであった。連合のカトリックの信者達の間には彼等の信仰があり十字架がある。それはもう既にこのバチカンにも見えているものであった。
「彼等の今のはしゃぎようはな」
「何処までも。嬉しいか」
「バチカンは今までエウロパのものだったからな」
 それは逆立ちしても変わらないものであった。少なくとも今まではだ。
「それが彼等のものになる」
「神を奪う」
 信仰のうえではそうになる。
「かつてのローマ帝国のようにか」
「ローマを乗っ取ったのはキリスト教だったが」
 ローマでは征服した国家の神を入れるのは当然であった。そうして多くの神々をその信仰の中に持っていたのである。それがローマであったのだ。
 またローマはキリスト教の飲み込まれた。そうした意味であのビザンツ帝国も神聖ローマ帝国もローマ帝国ではないのだ。何故なら多神教こそがローマだったからだ。
「今度は我々がか」
「連合に」
「しかし」
 ここでまた一人が言うのだった。
「どうした?」
「我々は諦めることはない」
「諦めないのか」
「そうだ」
 言いながら顔もあげてみせる。
「いいか」
「うむ」
「どうした?」
「待っていれば。また時が来るのだ」
「時がか」
「そうだ。きっと来る」
 遠くを見ていた。今のバチカンを見てはいなかった。
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