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第七部第三章 狐狩りその四
「さて」
 話が終わるとアッチャラーンは二人に顔を向けた。
「今夜は何か予定がありますかな」
「ええ」
 二人はそれに対してほぼ同時に答えた。
「今夜はパーティーに出席しなければいけませんので」
「私もです」
「おや、二人共」
「あっ」
 二人はアッチャラーンの言葉を聞き互いに顔を見合わせた。
「もしかして場所も同じだとかはないですな」
「ええと」
 二人はそれを受けてそれぞれ場所を言うことにした。
「船の上です。ガルーダという船で」
「おお、あの豪華客船ですね」
 アッチャラーンは八条の言葉を聞いて思わず声をあげた。地球で有名な客船である。所有者はバイソングループである。
「私もです」
 金も答えた。何と同じ場所であった。
「おお」
 それを聞いたアッチャラーンは思わず声を漏らさずにいられなかった。
「これはまた。同じ船の上とは」
「私もはじめて知りました」
「私もです」
 二人はやはりほぼ同時にそう答えた。
「何でも環太平洋諸国の親睦の為のパーティーらしくて。首相は出席されないのですか」
「私ですか」
 彼はそれを受けてまずはにこやかに微笑んだ。
「とりあえずは招待券が来ておりますが」
「では参加されますね」
「そうしたいのですがね。料理が気になります」
「またその様な」
 八条はそれを聞いて苦笑した。金の顔はやはり変わらない。
「うんと辛いタイの料理があるといいのですがね」
「あの船はバイソングループの所有ですからね。フィリピンの料理がメインになるのでは」
「ううむ」
 アッチャラーンはそれを聞いてまず考え込んだ。
「ただ太平洋諸国の親睦パーティーですからタイの料理も出ると思いますよ」
「それならいいですけれどね。ただ」
「ただ!?」
「味まで美味くやってくれているかどうか。タイの料理もまた独特ですから」
「そういうものですか」
「ええ。八条長官は和食についてはよく御存知ですね」
「ええ、まあ」
 知らない筈もなかった。
「では日本以外の国の和食がかなり違っているのも御存知ですね」
「はい。それはよく」
 日本の方もよく言われることである。だからこそわかることであった。
「そういうことです。私にとって他の国のタイ料理はあまり舌に合わないことが時々あるのです。言わせて頂きますとあくまで『タイ風の料理』なわけでして」
「成程」
「あれはあまり好きになれないのです。味はともかくとして」
「そのお気持ちはよくわかります」
「そうでしょう。ですがここはカレーラス会長の御顔を立てなくてはなりませんし。行きますか」
「そうされた方がよろしいでしょうね」
 ここで金が言った。
「やはり」
「はい。それに料理も悪くないと思いますよ」
「それは何故ですかな」
「バイソングループの誇るお菓子が出るからです」
「お菓子」
「はい」
 金はすぐに答えた。
「あのグループの系列のお菓子はどれも美味しいのですよ」
「そうだったのですか」
 これにはアッチャラーンも少し驚いた。まさか金がお菓子の話をするとは思わなかったからだ。
「ですから楽しみにして頂いて宜しいかと思います」
「わかりました」
 まだ驚きが残っているがそれに答えた。
「では今夜のパーティーに出席することにしましょう」
「はい、それが宜しいかと」
 こうしてアッチャラーンのパーティーへの出席が決まった。そして夜になった。
「ふむ」
 アッチャラーンはまずはパーティーの場にあるタイ料理を食べた。無論その服はタキシードである。
「如何ですか」
 それを同じくタキシードを着た八条が問う。
「いいですな」
 その声と顔は喜びの中にあるものであった。
「よく再現されている。いやはや、これは美味しい」
「それはよかったですね」
「うん、流石はバイソングループの総帥といったところですかな」
「カレーラス会長がそれを聞かれたら喜びますよ」
「ははは、確かに」
 見ればカレーラスもこの場にいた。そしてマウムやポート等と何やら話をしている。その関係かアフリカ各国の重要人物達もいる。
「また野球の話でもしているのかな」
 皆三人が何やら話をしているのを見てふとそう思った。何故ならそれぞれの監督達もいたからだ。
 だがそれは違っていた。今は演劇について話をしていた。
「やはり演劇ならば我がファランクスのものですな」
 マウムは得意気に他の二人にそう語っていた。
「連合でもその素晴らしさは知られています。女優の登竜門としても」
「いやいや」
 だがポートはそれをやんわりと否定した。
「我がイーグルグループも負けてはおりませんぞ。我が緑鷲歌劇場は御存知ですな」
「ええ」
「あれがある限りファランクスさんの一番は容易ではないですぞ」
「おやおや、イーグルさんの悪い癖がはじまりましたな」
 ここでこの船のオーナーであるカレーラスが口を開いた。
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